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ZEHの3大メリット提案術

ZEH・LCCM 特集・連載 2018/11/01 18:00

 ZEHの3大メリットZEHという素晴らしい住宅を提案しようにもそのメリットを説明するのは難しい。高効率設備と太陽光発電等により光熱費を削減。高断熱で健康的に。地球環境に優しい…。なるほど。響きは良い。だが、残念ながら、「ゼッチは良い住宅です」と単語の羅列だけでは具体性がない。少しお高く買うだけの意味が求められる。では、どのような提案アイデアがあるのか。そもそも、この「良い」とは何か。まずはこの問題から捉えることからはじめ、本章ではZEHの3大メリット「経済メリット」「健康増進」「防災対策」に照準をあてる。

【目次】
〔経済メリット〕ちょっとお得な家計に優しいZ E H の魅力
〔健康・快適〕ZEH住むヒト、健康自慢!循環器疾患から喘息、皮膚炎まで改善
〔防災力〕備えているから憂い無し!? スマエネ機器の災害対応力

ちょっとお得な家計に優しいZ E H の魅力

 ZEHの経済的メリットは施主にとってどのような効用が期待できるのか。本頁では最新住宅ニーズから利潤の原資となる太陽光発電の回収理論、ライフサイクルコスト、電力料金プランの最適化にフォーカスする。

一般消費者が重視する点は「建物性能」
ZEH理解者の8割が検討意向


 世の住宅購入希望者は一体どのような住宅を欲しているのか。それがわかれば苦労はしないが、ここに一つの指標がある。住宅金融支援機構が行ったアンケート調査によれば、一般消費者が住宅事業者選びで最も重視するポイントはブランド力や規模ではなく「建物性能」だった。中でも「高耐久性」「耐震性」「省エネ性」の順に回答率が高い。換言すれば「長く丈夫で安心に生活できる住まい」ということになろうか。では、ピンポイントにZEHは購入したいものなのか。太陽光パネルメーカーのソーラーフロンティアが実施した『家庭のエネルギーに関する意識調査』によると「ZEHを詳しく知っている」と回答した人が3割。このうち検討したいと考える割合は8割と高い水準だった。つまり、十分理解が得られていれば購入する可能性も高いと言える。2つの調査を総合すると、ZEHを売る際の提案方針は「我が社が提供する住宅は高耐久・高耐震性で且つ省エネです」とするのが正攻法となる。ZEH推進協議会の代表理事を務め、先進的ビルダーとして知られるエコワークスの小山貴史社長が提唱する「ZEHの説明は最後。まずは自社が展開する住宅の良さを伝える」というプレゼンの流れが理に適っている様だ。ただし、検討まで導くには認知・理解度が低い分、提案力を鍛えておく必要があるだろう。そして、この最終局面が実に難しいと言われている。ZEH普及への課題を分析した経済産業省のアンケート結果では「顧客の理解を引き出すことが出来なかった」という意見がみられ、本誌『月刊スマートハウス』(No.22)にて行った独自アンケート調査でも「経済メリットをうまく訴求できない」という意見が散見され「わかりやすいシミュレーションの開発」が今後ZEH率を向上させる上で重要な要素として挙がっていた。改めて活字にしたときのZEHの「良さ」とは「経済メリット」に加え「高断熱化による快適な室内環境と大幅な省エネ」「災害による停電・断水時でも一定期間自給出来る」など様々ある。どのポイントがフックするかは購入検討者の状況をみて提案したいところだが、少なくとも本章で見る3大メリットは熟知しておきたい。そこで、まずは我々日本人に馴染みが深くシンプルな「省エネ≒光熱費の節約≒家計に優しい」というロジックからみていく。

光熱費削減で資産形成ZEH購入で海外に行こう

 総務省『家計調査年報』によれば、ローン返済世帯の家計収支平均月額は実収入(額面):約61万円、可処分所得(手取り):約49万円。水道・光熱費は約2万円(内:電気代約1万円)だった。統計に反映される「平均」は、全世帯年間平均所得560万円(厚生労働省統計)を上回り、一定程度余裕があることに注意は必要だが、長期的な観点でみれば喩え月額1万円の削減であっても年間12万円、10年単位で考えれば数百万円の累積となる。正に『塵も積もれば山となる』論であるが「20〜60代の3人に1人が家計管理をしていない」(『スーパーマーケット白書』)との調査もあり、住宅購入や結婚といったライフイベントは家計や将来を見直す良い機会となる。この意味で光熱費という固定費を削減できるZEHは合理的な選択肢と言える。世相を経済系の雑誌メディアから観察すると近年『ラクして得する』『タダで儲ける』といった特集が組まれ「金利低下によるローンの借り換え」「カーシェア活用」「格安スマホに乗換」「電力・ガス契約プランの見直し」「必用のない保険の解約」といったノウハウ論が展開され、ある種の流行現象を生んでいる。携帯電話を例に取ると「1契約当たりの月額費用(7,000円程度)が格安スマホに乗り換えると半額以下になる」といった具合だ。光熱費・通信費などもセットにすることで「浮いたお金で○○しよう」というPR戦略もみられる。実際に料金プランを見直した主婦(30代)の話では「今まで払っていた費用は何だったの」と驚きを隠せない様子だった。住宅購入にあたり最も影響力があるのは“奥様”であることは良く知られる。とすれば、光熱費など各項目に関して「何だ。月額数千円の削減ではないか」とはならないはずだ。生涯に渡って複数支払うと考えれば総額は決して小さくない。

実際のデータからみるZEHの経済性
エネルギー収支平均は年間プラス3万円


 話は広範囲に及んだが、平均所得が下がっている昨今、注目すべきは『僅か』と考えられるお金の節約ノウハウは資産形成を図る上で重要な施策になり得るということ。一般住宅は植物工場やレストランではない。生活を営むベースや簿価上の資産になりえても現実的なお金には直結しない。一方、ZEHには太陽光発電がありエネルギーというベネフィットが生み出される。ならば『ZEHにして外食や旅行に出かけよう』『老後資金を蓄えよう』というのも嘘ではない。施主の気付かない点を如何に訴求し夢を膨らませられるかに掛かっている。実際どれくらい「お得」になるのか。補助事業における調査では年間エネルギーコスト収支は全体平均で約3万円プラスとなることが明らかとなっている(『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業調査発表会2017』)。一般住宅は光熱費が掛かってくる(年間約24万円)ため10年間の単純計算で考えると数百万円単位の差が出てくることになる。では、どのような経済原理なのか。特に重要となるのは太陽光発電の売電と自家消費の仕組みである。「躯体の事は自信があっても、太陽光はよく分からないし、説明するのが面倒くさい」「コストアップになるだけ」と考えている事業者も多いというが、この点さえ分かれば光熱費やローンなどを含めた複雑な試算を検討しなくても最低限の「お得感」が提案可能となる。と、その前に「もはやメリットがないのでは?」とネガティブな印象が蔓延する太陽光の誤解を解くことから始めたい。周知の通り、固定価格買取制度が始まって以降、住宅用の売電単価は約2円/kWhずつ引き下げられている。この引き下げが「終わった説」を生み出している背景となっているが、価格を算定する諸条件をご存知だろうか。『電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法』(通称:再エネ法)の第三条には「通常要すると認められる費用」や設置者が受けるべき「適正な利潤」を勘案し買取価格が見直されるということが明記されている。つまり、そもそも利潤が確保されたものという扱われ方だ。また、言い換えれば、50万円/kW(12年時)から30万円/kW以下へと加速度的なコストダウンに連動させ国民負担軽減の観点から「引き下げられた」のである。日射量や屋根の方角といった設置条件、メーカー仕様等にもよるが太陽光単体では9〜13年程度で投資回収できる計算となっている。算定にあたり用いられるIRR( ≒利回り)も3.2%と据置になっていることから実質的には「適正な利潤」に変化はない。金融商品と概念は異なるが、国内株式の単純平均利回は2%前後。最大でも5%程度であることから投資的な考えでは十分に魅力的と言える。世界的に見ても買取価格はまだ高い水準を維持していることから「太陽光終わった説」は誤謬である。数年前に流行した全量売電による大容量搭載住宅「フルソーラー」のように投機的に「儲からなくなった」だけで現行制度下は未だ「お得」であることは変わらない。とはいえ「借入限度額により設置できない場合があるではないか」と考える事業者もあるだろう。特に様々な高性能機器を要するZEHは、その予算内において、住み心地・エネルギー性能を両立させなければならない。快適性を確保しつつ省エネに貢献するというZEHの意義の中、太陽光発電を導入する代わりに理想の住まいの何かを諦めるのは本末転倒である。太陽光を設置したいが、ZEHを提案したいが、価格が…。そんな悩みを抱える施主や住宅事業者には第三者保有モデルがある。本題に戻る。売電単価を決定する政府諮問機関である調達価格算定委員会及び太陽光発電業界では、各種調査データから曇天や雨の日などを除き一般的に年間稼働時間を約1,200時間としている。例えば5kWを搭載すると総発電量は〔6,000kWh〕となる。これは平均的な一般家庭の年間消費電力量に十分相当する値だ。ただし、昼間は家に居ない場合が多いことから平均的に自家消費へ回るのは約3割。余った約7割を売電している。金額換算すると年間約15万円の導入効果になる。期間終了後はどうなるのかという点については、残念ながら現段階で10年目以降に関しての売電単価等は決まっていない。とはいえ仮に0円でも自家消費分の約4万円が毎年浮く。問題なく稼働すれば追加10年で40万円超。付け加えるなら燃料費高騰等の各種要因で電灯料金は引上が予想されるため年間数万円は最低限の利潤とみなせる。この10年目以降や制度終了後にどうなるのかという事象は今まさに太陽光業界で「2019年問題」として注目が集まり、対策として給湯機や蓄電池のフル活用による自家消費率の向上が検討され始めている。現時点でZEHを購入しても売電期間が終了する頃には自家消費モデルが完成するなど何らかの解法が見つかっているとみられる。有効とされる蓄電池も今よりコストがぐっと下がっているとみられ、ZEHは自家消費型へ一段進化し売電モデルから脱却できる時代は直ぐそこに来ている。この流れから先行的な対策として蓄電池やEV連携を標準化していても悪くはないだろう。経済的メリットを説明するにあたり蓋然性が高いと言えるのはここまで。一部に見られる「儲かりまっせ」とするのは厳禁だ。急激に胡散臭くなる。「車は壊れるのに太陽光は壊れないの?」という質問が飛んだ際に戸惑う羽目になる。喩え高耐久性に優れた製品で、メーカーが長期保証を付帯していても、他の設備同様にメンテや交換が必要になる可能性があるというアナウンスをお忘れ無く。ちなみに日本国内における住宅用太陽光発電システムの稼働実績最長記録は元三洋電機代表取締役でパナソニック太陽電池モジュールHITの創始者でもある桑野幸徳氏が自宅に導入した26年。現在も発電しているため、記録更新に視線は集まるが、長期ローンに耐えうる30年以上がまだ証明されている訳ではない。

生活スタイルは十人十色アフターフォローは入念に

 ここまで経済的メリットの原資となる太陽光による経済原理をみてきたが、提案に際し手っ取り早い方法も実はある。それが光熱費だけでなく設備更新を含めた「生涯費用=ライフサイクルコスト」試算ツールだ。パナソニック、LIXIL、福井コンピュータなどを筆頭に各社より打ち出されている。住宅情報、導入設備、ローン金利等を選択するだけで生涯費用を算出するできるものもある。ひとつの提案モデルを構築すれば自社で展開する標準的なZEHを企画化し、おおよそのシミュレーション値としてプレゼンすることも可能になる。実際には仕入等の条件に左右されるが、試みにパナソニックの『エネスケ』を使用した結果では、一般住宅と比べ10年前後で累積コストが逆転、生涯費用はZEHが300万円程度も優位に「お得」という結果がはじき出された。長期の経済メリットが如実に可視化されるため経済メリット提案時の有効策として期待される。そうは言っても「パソコン自体好かん」という人が一定多数いることは事実。この場合、ナイスやジャパン建材、山善など商社系のサポートや各メーカー等が提供する支援サービスを利用し丸投げしてしまうのも一手だろう。注意点もある。長期に渡るメリットを示せるシミュレーションは具体的で且つ有用ではあっても、あくまで概算であることだ。喩えるなら「あなたの身長は180センチなのでサイズはLですね」と言って衣服を販売したようなもの。いくら精度が高くても生活スタイルは十人十色。携帯料金シミュのようにキャップが決まっている訳ではなく、実際に住んでみないと分からない。先行事例として2015年に東北地域でスマートシティ開発に携わった国際航業は「最先端のHEMS、太陽光、蓄電池、エネファーム等を導入したはずなのに光熱費が高いではないか」とのクレームを受けたという。そもそも、賃貸等から戸建に移る際は部屋数が増えるため電気代等は必然的に上がる可能性があるという事象はよく知られるが、原因究明に奔走した同社は、HEMS等から時間帯別利用データを分析することで、ほぼ同じ建築仕様、同じ設備でも最適料金プランは異なる場合があり、ライフスタイルに合わせた設定が必要であることを突き止めた。そこで利用料金プランを変更することで当該の施主宅では電気料金等が年間2~3万円も安くなったという。電気・ガス等の料金プランは事業者任せが多く施主や業者自身の契約に対する知識も万全ではない。自由化により料金体系は増加の一途を辿っている。アフターフォローを入念に行い最適化することは施主にとって更なる経済的メリット享受に繋がると言えよう。

それでもダメなら補助金を国だけでなく自治体支援も豊富に

 様々な観点から家計に優しいZEH提案術をみてきたが、纏めると、①まずは高性能ニーズを汲み取り自社の展開する強みや高断熱・高気密住宅の提案と同時に②ライフプランを設計〔関係構築・受注獲得〕、③光熱費削減による太陽光の回収理論や生涯費用など「お得度」を説明〔段階的に。メンテや交換などリスクが有ることも忘れずに〕、④完工後には電気料金プラン最適化〔その後の関係強化〕という流れになろうか。それでもダメなら、手厚い各種補助金がある。助成に関しては経産省・環境省のZEH補助金、国土交通省のグリーン化事業だけでなく太陽光や各種スマエネ機器に対しては地方自治体の導入支援が豊富だ。唯でさえ低い金利を更に一定期間引き下げる制度が住宅金融支援機構と自治体から誕生するなどZEH提案には追い風が吹いている。

▷〔健康・快適〕ZEH住むヒト、健康自慢!循環器疾患から喘息、皮膚炎まで改善

※本記事は月刊スマートハウス別冊 『ZEH MASTER 2018』 に掲載したものより抜粋しています。

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