ZEH普及最大の難所が「顧客の予算」であることは言うまでもない。建築費の増加を如何に解消するのか。期待のソリューションとして注目を集める「太陽光発電のゼロ円モデル」、お手軽な「ZEHパッケージ」、専門家による「最新提案術」を一挙収録した。
【目次】
そのZEH諦めないでゼロ円モデルで無理なく実現太陽光ライフ
商品化に有効なパッケージの実力
一般的な住宅よりも初期費用が嵩むZEHは、施主の予算によっては提案が難しい。そんな中、太陽光発電のゼロ円モデルを利用し打開を図る住宅事業者も増え始めている。
何もしないならメリットあるゼロ円モデルがオススメ
既知の通り、太陽光発電はFIT制度によって、導入後は長期的に売電を行うことができ、経済メリットを享受することができる。高い初期費用も「投資回収が可能であるため、借りてでも付ければいい」と捉えることはできるが、借入額にも限度がある。特に様々な高性能機器を要するZEHは、その予算内において、住み心地・エネルギー性能を両立させなければならない。快適性を確保しつつ省エネに貢献するというZEHの意義の中、太陽光発電を導入する代わりに理想の住まいの何かを諦めるのは〝我慢の省エネ〟に逆戻り。本末転倒である。太陽光を設置したいが、ZEHを提案したいが、価格が…。そんな悩みを抱える施主や住宅事業者にピッタリなのが第三者保有モデル≒“ゼロ円モデル”である。本特集ではこの“ゼロ円モデル”について詳解するが、その前に留意しておきたいことがある。それは太陽光発電のメリットを隈なく享受できるのは、自分の好きな様に利用できる“購入モデル”であるということ。一方で“ゼロ円モデル”は、初期費用こそ無料ではあるが、事業者と何らかの契約を取り交わす必要がある。事業者側にも利益があるからこそ成り立つビジネスであり、取り扱う上では、本来、施主が享受できる太陽光発電の導入メリットの一部が、対価として事業者側に分配されているということを認識しておく必要がある。無論、事業者は使用する太陽光システムを安価に仕入れたり、独自のプランを用意することで購入型に勝るとも劣らないメリットを利用者側にも提供している。日本国内において同モデルは16年4月に太陽光販売・施工大手の日本エコシステムが初めてスタート。次いで四国の有力販売店デンカシンキが参入、ハウステンボスの子会社で電力小売り等を手掛けるHTBエナジー、太陽光の見積サイト等を運営するアイアンドシー・クルーズ他が出資し立ち上がったシェアリングエネルギーが続き、その後も参入企業が増加。お得なプランが打ち出され続けている。
種類は「PPA」「リース」「割賦相殺」の3つ
そんなゼロ円モデルは、現在PPA(Power Purchase-Agreement)、リース、割賦相殺の大きく3つのスキームが存在する。違いは後述の通り。各々制約が課されるこれらスキームは、一般的な購入モデルに比べ提案が難しそうと感じられるかもしれないが、実はどれも根本の考え方は至ってシンプル。「ゼロ円で設置できるが、何らかの契約を結ぶだけ」である。“タダほど怖いものはない”というように、同スキームを初めて耳にする利用者にとっては、警戒心を強めてしまいそうだが、デメリットとなる契約はない。例えば、電力契約を結ぶPPAであれば、一般的な電気料金より安いプランが用意されていたり、リースでは購入したときと同じ様に自家消費分の電力や売電収入を得ることができ、リース料に余りあるメリットを享受できる。つまり何もしない状態よりも、費用ゼロで光熱費削減等に繋げることが可能ということだ。予算の関係で太陽光を購入できないのであれば、利用しない手はない。18年6月からPPAをスタートさせた長州産業は既に数百社の採用実績をあげており「建築費を上げることなく、電気代削減や最終的には無償でシステムを取得できるため、住宅の付加価値向上に繋がる点が評価されている。ZEHやLCCMに利用して頂いている事例もある」(新プロジェクト推進室)と好調ぶりを語る。リースモデルを展開するTEPCOホームテックでは「ビルダー様を中心に年間2500件程度のペースで問い合わせを頂いている。新築にスペックインして頂いているケースもあり、今後はこれら引き合いを実際の導入まで繋げていく」(岩崎辰之社長)と語る。既に住宅事業者自身が手掛ける事例も出てきており、有力ビルダーである秀光ビルドがPPAを展開するほか、土屋ホームではTEPCOホームテックのリースモデルを利用し、ZEHやレジリエンス住宅の推進を図っている。
独自性のあるプラン多数利用するならどれ選ぶ?
既に住宅事業者の領域でも取り入れ始めたゼロ円モデル。一年ほど前は展開する企業は数社しかいなかったが、現在は様々なスキームが存在し、さらに同じPPAであっても、それぞれ展開しているプランは大きく異なる。購入モデルを含め、案件に応じて使い分けられる様になれば、太陽光提案で怖いものはなくなるのではないだろうか。そこで簡単に各社スキームについて触れていきたいが、中でも独自性や差別化が際立っているのが、LIXILTEPCOスマートパートナーズの『建て得』、長州産業の『ソラトモサービス』、ハンファQセルズの『ソーラーメイト』である。『建て得』は、LIXIL製のZEH関連機器や住宅設備を同時に導入することで、電気料金が安くなるというもの。ZEHの購入を条件としているだけに、ZEH建築時には有効的に提案できるプランとなっている。他方、長州産業では現在、電力会社のオール電化プランと組み合わせることで独自性を創出。通常は太陽光からの電力を25.47円/kWhとするところ、関西電力管内では電化プランを利用する場合、23.43円/kWhに減額するプランを用意している。「電力会社さんとの連携を武器に採用増を図る」(新プロジェクト推進室)と意気込む。これら独自性のあるプランは、差別化を図れる一方、少々複雑化するため、説明が難しいという側面もある。これに対し、19年10月より参入したハンファQセルズは、対応エリアを全国としながらも、料金単価は一律24.9円/kWh(税抜)という、“対応幅”と“わかりやすさ”を武器に展開を始めている。同じく、東京電力グループ傘下のTRENDEも、わかりやすさを重視。太陽光発電からの電気、系統からの電気を区別せず一般的な電気料金から10%または20%OFFとするプランを展開している。仕組みとしては、燃料費等の要素を加味するなど、電力会社と同じ条件で電気料金を算出した後、割引を適用するというもの。裏側は少し複雑ではあるが、提案においては「従量電灯プランに限るが、『電気代はいくらになるの?』と聞かれれば『現在の電気代から10%または20%を引いた額になります』と即答できる」(松谷元気COO)と強みを語る。加えて、TEPCOホームテックが展開する『エネカリ』も、リースという浸透したモデルを応用しており、契約体系は極めてわかりやすい。電力契約等は絡まず、単純に利用料が発生するのみである。さらに同スキームは、開始当初のソーラーフロンティアだけでなく、様々なシステムメーカー等とのタイアップが進んでおり、選べる製品を拡充している。岩崎社長は「国内メーカーをはじめ主要なシステムメーカーとの協業が進んでいる。将来的にはメーカーフリーとし、仕組み自体をプラットフォーム化したいと考えている。これが実現すれば、提案側は『どのメーカーを採用するか』、設置に際しては『買うか』『借りるか』と、わかりやすい選択肢を提供することが可能となる」と語る。ZEH提案のツールとしてだけでなく、伸び悩む住宅用太陽光市場の打開策としても期待が膨らむゼロ円モデル。ZEH協では「ZEHの普及目標を達成するには、ZEHの経済性が大きな課題。なかでも太陽光システムの価格を下げることがネックとなるため、第三者所有モデルには注目している」(西川弘記太陽光委員長)と期待感を募らせている。
東京都もゼロ円モデル推進に着手
参画プレイヤーが増える中、いよいよ東京都では補助金まで用意された。第三者保有の利用に対し、kW当たり10万円を交付する。補助金をユーザーに還元する仕組みであることを条件とし、6月を目処に事業プランを募集、7月より交付申請を開始した。予算は7億円で1,300件(戸建:1,000件、集合:300件)を想定し、次年度も同規模の予算で継続する方向とする。「FIT制度自体が再エネ電源に対する補助事業であるため、システム自体に補助金を出すことが難しい。一方で住宅用太陽光の市場は売電価格の下落等から伸び悩んでいる状況。そこで新しい導入スキームである第三者保有モデルの利用に対して補助金を用意し、市場拡大を図る」(環境局地球環境エネルギー部)と経緯を語る。また「住宅用でもメンテや保守が必要だが、一般消費者の方にこれを求めるのは難しい。第三者保有では事業者が管理するため、安心性の高いシステムが拡がる」と話す。このため補助金はゼロ円モデルの中でも、第三者保有となるPPAやリース、屋根貸し/借りモデルを対象としている。「設置条件によっては付けられないケースでも補助を利用することによって対応可能とするなど、より多くの方に利用してもらえる機会が増えれば」(同)と思いを語る。一方で「普及に向けての問題も多く、最終的には信頼のあるインフラ事業者が同モデルを本格的に手掛けられるよう環境をいち早く整備すべきであり、これらリソースを活用したVPP等実証とも早期に連携すべき」(西川弘記太陽光委員長)との指摘がある。ゼロ円モデルの事業者側は、継続的な収入源として、またはVPPなど将来の電力事業を展開するためのリソースとして等の目的で太陽光発電の保有を拡げているが、所有するには当然、相応の資金力を有する。加えて構想する事業の規模によっては、必要量が限られるため、新規募集をストップするケースも出てくる。西川委員長の言の通り、不安定な事業継続性など課題があるわけだ。事実、いち早く取り組んだ日本エコシステムは新規募集を終了したほか、同様にスタートの早かったNTTスマイルエナジーも方針転換し、現在は公共産業向けに絞って展開している。プランを上手く活用し軌道に乗ったとしても、急遽サービスが終了する可能性があるのである。提案ツールとして使えそうだからといって安易には飛びつかず、こういった面もゼロ円モデルの性質として理解し、活用する必要がある。
※本記事は月刊スマートハウス別冊 『ZEH MASTER 2019』 に掲載したものより抜粋しています。
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