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ZEH設計基本をおさらい

ZEH・LCCM 特集・連載 2018/11/01 18:00

 「そもそもZEHって何だ?」という読者は少ないと考えられるが「もはやZEHはあたりまえ」「標準化は当然」と先導的なプレイヤーは次なる差別化に向け動き出すなど市場の変化は著しくなってきた。本項では改めて、その種類や定義、構成設備といった基本的な事象を概観する。

【目次】
〔基本編〕ZEHの定義と5つのシリーズ
〔仕様編〕最適ZEH仕様全1177件の実データ徹底調査
〔応用編〕徹底解剖!「ZEH+」の3要件

正確には「ゼロ」ではないZEHの定義とは?

 一文で表現するとZEH(通称:ゼッチ)とは「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」(経済産業省『ZEHロードマップとりまとめ』2015年12月公表)と定義される。その要件は前頁に纏めた通り地域区分毎に定められた外皮基準UA値〔1・2地域:≦0.40、3地域:≦0.50、4〜7地域:≦0.60〕を満たした上で、再エネを除き一次エネルギー消費量:20%以上削減、再エネを含め同100%以上となるものとされる。外皮基準に関しては「イチニー、サン、ヨンが4・5・6以下」とリズムに合わせれば覚えやすい。注意が必要なのは「ゼロ」という語感から「温室効果ガス=ゼロ」「光熱費ゼロ」と解釈されるキライもあるが、正確には「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」であり、この「ネット=正味の」という表現の中に「基準(設計)一次エネ消費量の対象は暖冷房、換気、給湯、照明」とし「家電負荷を除く」と明示されている(同)。つまり「実質」であり正確には「ゼロ」ではない。換言すれば「設計基準通り建てたので『ゼッチ』ですが、冷蔵庫やTVなど家電製品群のエネルギー消費削減は除いています」というものだ。「真のゼロエネ」を謳うのであれば設計・運用・廃棄段階までのCO2排出を考慮したLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)という究極の省エネ・省CO2住宅や、「光熱費ゼロ」を訴求する場合は、蓄電システムや電気自動車&V2H等を組み込んだ完全自家消費型システムを構築する必要が出てくる。ちなみに現段階で蓄電設備は要件に組み込まれていないが将来的にVPP(Virtual PowerPlant:バーチャルパワープラント)やDR(DemandResponse:ディマンドリスポンス)など次世代電力インフラを構築する際にはZEHをベースとしたスマートハウスの普及が構想されている。

理論的には「強化外皮+高効率設備」の組み合わせ
大開口や吹き抜けなどデザイン性重視も可能


 それでは一般的なZEHはどのような設備や仕様が必要なのか。主要機器・部材は図表の通りだが、日本最大級の建材・設備関連メーカー団体である日本建材・住宅設備産業協会が独自に制作した『ZEHのつくり方』を参照してみる。これは高性能仕様の外皮とトップランナー性能の高効率設備で基準一次エネルギー消費量を20%以上削減し最小限の太陽光発電で100%削減する仕様になっている。木造2階建(延床面積約120㎡)、4LDKの一般的な住宅をモデルにしているため実際の条件によっては仕様が異なる場合があることに注意は必要だが、「UA値0.28〜0.56の躯体性能に、エアコン(い)+第一(三)種換気+エコキュート+全室LED+太陽光発電システム3〜6kW程度でZEH化」としている。次項の仕様編では実際のデータを逆引きし、最適解を探ったが同様の結果が得られた。コスト面に関しては一般住宅と比べ設備・断熱サッシ等のイニシャルが概ね300〜400万円UP(うち太陽光発電と高断熱化でそれぞれ3〜4割を占める)となってしまうが、後編で詳報する通り、施主にとって「光熱費削減」「高断熱化による健康増進」「エネルギー自立化による防災・減災対策」など多くのメリットを享受することができる。問題となるのは地域やデザイン性とのズレだろう。住宅の省エネ性能は居室が狭く、開口部は小さい方が計算上有利に働く。間仕切りがない大空間は一つの大部屋とみなされ空調に費やすエネルギーが多い部屋に、大開口窓を用いた開放的な居室は単に熱損失の高い部屋とみなされる。つまり、吹き抜けやロフトといったデザイン性を追求すればするほど、計算上はエネルギーを多く使用する住宅となってしまう。相反する2つの要素は歯がゆくもトレードオフの関係にある。市場立ち上がり当初は難問とされてきたが、関連する高性能住宅の拡大や断熱水準が引き上がってきたことで建材の値段が下がり、関連メーカーが性能向上を図った製品開発を打ち出すなどで同問題は一時期よりも指摘されなくなってきた。残るは差別化を図るために+αをどのように考えるか。長年培った叡智を結集させればオリジナリティ溢れるZEHを創造することも可能だ。

地域性とエネルギー政策の両面を底上げ5つに増えたZEHシリーズ

 ここまで一般的なZEHの定義や設備構成などを概観したが、17年までその種類は「地域毎に定めた外皮性能をクリアし、再エネ除く一次エネ削減量20%以上及び再エネ含む同100%以上をZEH」「同75%以上に達するものをNearly ZEH」の2つとしてきた。一方、全国的な浸透が進むなか各種課題が散見され経産省WGが要因を分析。これらを集約した『新・ZEHロードマップ』(2018年5月公表)では全5シリーズに拡充されている。住宅建築は気候や土地・風土の影響を受ける。小規模住宅が多い東京・大阪といった大都市圏、低日射・積雪が重なる北海道や日本海側といった地域は、それぞれ高度地区指定による北側斜線という都市計画に基づく制限や、積雪や暖房負荷により太陽光搭載量が限定される、または必要となる創エネ量を確保できないため「難所地域」とされる。実際に新築住宅着工に対するZEH補助金交付決定シェアは積雪・低日射地域となる北海道・東北・日本海側沿岸、東京・神奈川などの都市部は全国平均よりも低くなっている(『ZEH支援事業調査発表会2017』)。今回の措置はこれらに対応する形となっている。寒冷地・低日射地域には『NearlyZEH』、都市狭小地限定ではあるが太陽光搭載無しのゼロエネ指向型『ZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド)』が「広義のZEH」として認められるようになった。また、国の再エネ政策と整合したビジョンとして将来的な自家消費時代を見越した上位モデル『ZEH+(ゼッチ・プラス)』が追加されている。『Nearly ZEH』と『ZEH Oriented』に関しては対象地域が定められている。各種要件に関しては図表を参照のこと。『ZEH+』『Nearly ZEH+』は、更なる省エネの実現として「再エネを除き一次エネ消費量25%以上削減に加え、①外皮性能の更なる強化(1・2地域:≦0.30、3~5地域:≦0.40、6・7地域:≦0.50)、②HEMSにより太陽光や給湯機など各種設備を制御可能にする高度エネマネ、③充電器の装備など電気自動車を活用した自家消費の拡大という3つのうち2つを選択する要素が加わっているため別頁にて詳解していく。何やら横文字や数字上のアレコレが多く並び難解そうに見えるが、実力ある事業者にとって情報を整理していけば容易に習得していけることだろう。これら新シリーズ拡充には地域やエネルギー政策の両方を実現するだけでなくもうひとつの意味がある。『旧・ZEHロードマップ』策定時に提唱された「平均」という概念の具現化である。本誌『月刊スマートハウス』がZEH政策を取材してきた当初(15年時)は「一次エネ消費量削減率が75%・100%・125%と異なる住宅があったと仮定した場合、3つを合算し除した際に100%となる。これが『平均』である」と経済産業省担当者は説明していた。厳しい見方をすれば本質的な意味でこれらは「真のゼロエネ」ではなく妥協案と言えるが、現実に即したものとして枠組みの浸透が期待されている。

▷▷これで完璧!最適ZEH仕様全1177件の実データ徹底調査

※本記事は月刊スマートハウス別冊 『ZEH MASTER 2018』 に掲載したものより抜粋しています。

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