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これで完璧!最適ZEH仕様全1177件の実データ徹底調査

ZEH・LCCM 特集・連載 2018/11/01 18:00

 基本編にてZEHの定義や種類を確認したところで、仕様編では実際に建築されたデータから最適仕様について考察する。結論から先に述べると、現存するZEH仕様と機器の組合せには一定の法則性と傾向があり、全地域で建築可能であるということだった。低日射・積雪、都市狭小も何のその。「これで完璧!」と普及の後押しになれば雑誌冥利に尽きる訳である。

1〜7地域をカバーする最適ZEH実例240件
 
 「年間で消費する住宅の一次エネ消費量が創エネとの差し引きでゼロ以下になる」という定義上のZEH以外にも市場では幾つかの種類が出始めている。10kW以上の太陽光発電を搭載することで削減率200%を達成する『大容量型』や躯体性能をHEAT20G2レベルにまで高めた『高断熱型』、耐震性を高め、蓄電システム等を組み合わせる『+α』を志向したモノなど様々ある。それぞれ経済的メリットもしくは健康・快適に加え安全性、自給自足といった差別化戦略が打ち出されている。では、最適なZEH仕様とは何か。業界では各種セミナーなど機器の組合せに関する情報や個別の事例集は流通しているが、実際のデータから逆引き調査した知見はまだ無い。理論は判るが「そこんトコどうなの?」と疑問を抱いている読者も多い事だろう。本頁は『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業調査結果(2017年版)』において史上初めて公開された「建築計画と省エネ性能の分析マスターデータ」を徹底分析。過去に補助金を活用した1,000件以上の実データからZEH基準(Nearly ZEH含む)を達成した住宅の最大公約数を割り出した。分析対象は公開された全1,177件のうち年間一次エネ削減率が105%以下とZEH基準を満たす240件(Nearly ZEH含む)。それ以上は「最適≒ぴったり」という観点に照準を合わせるため対象外とした。サンプルは、5〜7地域(201件)の温暖地に偏りは有るが概ね全域をカバーした。延床面積は平均124㎡と全国平均とほぼ同様の水準だった。明確な定義はないが大都市圏に多い100㎡以下のいわゆる狭小住宅(28件)、北海道・東北、日本海側など豪雪地帯に指定される積雪地域(50件)、日射が少なく太陽光の発電が不利とされる低日射A2地域(29件)など、高難度とされる立地条件での実例も抽出可能なバラエティに富んだデータである。

外皮強化基準相当が主流太陽光搭載容量は理論値の約1.2倍

 まずは地域毎の全体傾向からみていく。躯体性能を示す一つの指標である外皮平均熱貫流率(UA値)の平均は経済産業省『強化外皮基準』、国土交通省『高度省エネ型ランクアップ基準』に相当していた。太陽光除く外皮性能と高効率設備の導入による一次エネ削減率は基準値〔20%以上〕の1.7〜2倍とレベルの高いものだった。概ね断熱性能が高ければ太陽光除く削減率が上昇する相関関係もみられた。創エネの鍵を握る太陽光発電システムの搭載容量は日本建材・住宅設備産業協会が作成した気鋭の指南書『ZEHのつくり方』における理論値を1.2倍程度上回っていた。設備の採用状況は例年公開される『ZEH調査報告会』で明らかとされる結果と同様の傾向がみられた。給湯設備は電気ヒートポンプ給湯機(エコキュート)と燃料電池(エネファーム)で8割を占め二分。主たる居室の冷房は高効率エアコンが大半を占めている。暖房は温水床暖房を導入するケースも4割に上り燃料電池と熱源を兼用している場合が殆どだった。その他居室は一般エアコンまたは設置無しが半数超。換気設備は高性能な第一種換気の採用が3割以上を占めた。

全域分布はエコキュートと第一種換気、高効率エアコンの組合せ

 どの仕様で何を組合せていたのか。ここでは躯体性能であるUA値を横軸に、縦軸は太陽光除く一次エネ削減率で固定し機種別の分布をプロットすることでその傾向を探った。外皮仕様と地域区分の関係は概ねUA値0.2〜0.4が1〜4地域、以降は5〜7地域に相当し各々に特徴がみられる。結果をみると給湯設備はエコキュートが全域に分布する一方で燃料電池は温暖地に偏りがあった。換気システムは4地域以南においても第一種換気の採用が多く集中した。主たる居室の暖房設備に関する地域差はみられなかった(冷房は高効率エアコンが採用多数であるため省略)。総合するとエコキュート、第一種換気、高効率エアコンのセットが幅広く全域に分布する一方で、採用件数が高くても燃料電池、第三種換気の組み合せは限定的だった。ちなみに外皮性能に影響する要因はやはり開口部だった。窓が小さいなど開口部比率が低いほどやや優位な傾向がみられた。とはいえ、南面開口部比率が50 %を超えるものが5件(最大86%)と極僅かだが存在することから大開口で日当たりの良いZEHも不可能ではないことを示唆している。

太陽光搭載の目安マジックナンバー0. 04

 工務店業界に馴染みが薄く最も頭を悩ませていると言える太陽光発電についての結果は興味深いものだった。傾向を探るに当たり先の方法でプロットを作図した結果、断熱性能との相関はみられなかった。また年間一次エネ削減率から太陽光を除く一次エネ削減率を貢献度として集計しても容量に比例している訳ではないことが明らかとなった。相関があったのは延床面積である。平米数と比例して太陽光発電の搭載容量は大きくなる傾向がみられた。平屋や吹き抜けの有無により例外はあるが本調査データにおいては、延床面積に係数0.04kW/㎡を乗じれば実際の搭載容量=±1kWの範囲で分布データの7割が収まった。例えば、床面積120㎡の建築条件であれば約5kWが必要という事になる。太陽光に関してはもう一点ある。SII公開データには『都道府県ごとの太陽光発電による平均年間創エネルギー量』も添付されている。ここから得られた事実は「発電量に殆ど地域差がない」ということであった。つまり、低日射地域においても発電量自体には影響せず、経済メリットに差が出ないことを示している。搭載容量の大小を除けば「太陽光=つける意味がない説」の反証になると言えるだろう。調査結果全体を纏めてみる。本頁では公開されたデータのうち年間一次エネ削減率105%以下の基準を満たす240件を分析対象に基準を達成する仕様の最大公約数を求めることを目的とした。結果、外皮性能は強化型、設備はエコキュート+第一(三)種換気+高効率個別エアコン、太陽光の搭載容量は延床面積に係数を乗じることで最適化が図れることが判った。ただし全体としてN数が少ないという偏りには注意が必要で、今後、公開されていくであろうデータの蓄積から最適解を求める必要があることは言うまでもない。一方で、理論的な枠組みとしてある建産協『ZEHのつくり方』の一部と大幅な相違はみられないことから、一定の目安としての有効性が認められるだろう。 最後に難所とされる地域について言及しておく。本項ではZEH基準を満たした実例を対象としたが、地域別にみても、低日射・積雪、都市狭小地においても同様にZEHを達成した住宅のデータが存在した。どれも仕様や組合せに特別な設計を施している訳ではない。つまり、全国どの地域でも建築可能であり普及加速への道は開かれているという事を示している。残る課題は提案方法という事になるだろうか。この点は別頁にてZEHの魅力について考察を加えていく。

▷〔応用編〕徹底解剖!『ZEH+』3つの要件

※本記事は月刊スマートハウス別冊 『ZEH MASTER 2018』 に掲載したものより抜粋しています。

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