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ブレイク前に押さえたい。蓄電市場最前線

 2019年11月̶。蓄電業界にとって最も待ちわびた日といっても過言ではない。いよいよ太陽光発電の10年間の売電期間終了を迎えるユーザー(卒FIT生)が53万件現れ、売電ではなく、よりお得な自家消費に切り替える傾向が強くなっていくからだ。普段売電していた太陽光発電の余剰電力は、これからは蓄えておき必要な時に取り出す、こうした機能を有する蓄エネルギー機器が今か今かと出番を待っている状況なのだ。前号に続き卒FIT市場キックオフPart 2では、従前より同市場での活躍が有望視されている蓄電システムの現況と、今後のメーカー各社の展望等について探った。

18年度前年比50%の大幅増

 家庭用蓄電システムは、2011年東日本大震災以降の計画停電をキッカケに、国の補助制度も相まって市場が勃興した。これをファーストブレイクとするならば、今回の卒FIT市場がスタートする2019年度はまさにセカンドブレイクとして期待されている。一時は、蓄電システム専用補助制度の終焉とともに市場成長が鈍化し“我慢の時期”こそあったものの、その間、メーカー努力による製品改良、ラインナップ拡充、コストダウンが図られ、販売サイドでは各社独自の蓄電池販売スキームを確立し、安定した市場として成長してきた。日本電機工業会(JEMA)の自主統計ると上位3社と肩を並べる構図になる。17年度に続きトップとなったシャープは約300の特約店シャープサンビスタメンバーや、スマエネ機器商社を通じた訪販ルートにおける販売の勢いがシェア獲得に直結。IoTHE事業本部エネマネ企画開発統轄部の五角博純統轄部長は「全国各地で提案営業の仕方など定期的な勉強会をはじめ、当社自らが現地販売店のもとに常駐し営業支援を行うなど販売店に寄り添ったサポートを講じてきたことが奏功した」と語る。僅差で次いだパナソニックは、グループ内においても大手ハウスや住建、電材など多岐にわたる商流を持つが、中嶋慎一郎パワーエレクトロニクスSBU長は「全商流で伸びたが、やはり有力訪販業者を束ねるパナソニックLSスマートエナジーのルートが変わらず強い」とし、もともと太陽光パネル出身でもあるメーカー勢が、すでに構築されている既存の強によると直近の2018年度出荷台数は非系統連系型(単独型)も含め、前年度比49%もの大幅増の7万3,594台で累計25万台に迫る勢いとなった。容量ベースとしては同53%増の49万7,315kWh、累計175万kWhで着地した。JEMA担当者は「相次ぐ災害の影響もあり需要が一気に加速し、特に下期に大きく伸長した。16年度の凹みを除けば毎年40~50%の伸長を続けている」と解説する。少し細かく見ていくと製品仕様の傾向は9割近くが系統連系型の蓄電システムとなっているが、単独型もじわりと伸びを見せている状況である。単独型の販売を牽引するエリーパワーの小田佳常務執行役員は「工事なし置くだけで利用できる手軽さと最小限の電源で十分というニーズから集合住宅の各戸に導入が進んでいる。また、オフィスや介護福祉施設向けにもBCP対策などレジリエンス強化を目的に採用するケースも多い」と市況を語る。一方、蓄電用パワコンの仕様別でみると、太陽光発電のパワコンと一体となっているハイブリッドタイプが7割を占める。太陽光発電のシステム価格が下落する状況下、販売現場において、__もはや太陽光発電を蓄電システムのオプションと見なしセット販売する訪販業者の動きが活発化していることや、一部ではいち早く19年卒FIT生に対し、太陽光発電用パワコンの更新時期の重なりもあってハイブリッドタイプへの交換を進めたことで、同シェアとして表れたとみられる。加えて、こうしたハイブリッドタイプを中心に展開するメーカー勢がラインナップする容量帯がそのままボリュームゾーンとなって、6kW~10kWhと3kWh~6kWhが、それぞれ全体の4割、3割を占める結果になったようだ。

ブランドベースはメーカー3社拮抗

 そんな中、2018年度のメーカー出荷台数別シェアについて、ブランドベースではシャープ、パナソニック、オムロン(OEM供給除く)がほぼ横並びとなる構成となった。この3社に長州産業や伊藤忠商事(ODM供給除く)が次ぐ形になっているが、長州産業では他社ブランドの扱いも多く、同販売を含めれば一気に首位に躍り出る。ここ2年で急激にシェアを伸ばす伊藤忠商事は設計、開発から製造まで担うODM供給分を含めると上位3社と肩を並べる構図になる。17年度に続きトップとなったシャープは約300の特約店シャープサンビスタメンバーや、スマエネ機器商社を通じた訪販ルートにおける販売の勢いがシェア獲得に直結。IoTHE事業本部エネマネ企画開発統轄部の五角博純統轄部長は「全国各地で提案営業の仕方など定期的な勉強会をはじめ、当社自らが現地販売店のもとに常駐し営業支援を行うなど販売店に寄り添ったサポートを講じてきたことが奏功した」と語る。僅差で次いだパナソニックは、グループ内においても大手ハウスや住建、電材など多岐にわたる商流を持つが、中嶋慎一郎パワーエレクトロニクスSBU長は「全商流で伸びたが、やはり有力訪販業者を束ねるパナソニックLSスマートエナジーのルートが変わらず強い」とし、もともと太陽光パネル出身でもあるメーカー勢が、すでに構築されている既存の強力な太陽光販売ルートを活用できたことが如実にシェアとして表れたとみられる。オムロンは、これまで太陽光パネルメーカー向けにOEM供給に徹してきたが、昨年度から本格的に自社ブランド品の展開に注力した。環境事業本部マーケティング部の大橋勝己商品戦略課長は「安定したOEM供給を続けたことに加え、特にシングルタイプの自社ブランド品がスマエネ機器商社や家電量販店向け等に堅調推移し、出荷増に寄与した」とし、自社ルートを強固なものにしていっている。一方、パワコンベースは先のオムロンに続いて田淵電機が食い込む形となった。同社においても、太陽光パネルメーカー等へのOEM供給のみならず、自社ブランド品を武器に大手ハウスやスマエネ機器商社への販路拡大とともにサポート体制の充実を図ってきた。執行役員エネルギー・ソリューション事業本部の坂本幸隆本部長は「相次ぐ災害で消費者の“安心価値”を求める需要が加速したことで大きく伸長。自家消費とともに防災のキーワードでも市場が盛り上がっている」とする。なお、リチウムイオン電池のメーカーシェアについてはLG化学が圧倒し、村田製作所、パナソニック、サムスンSDIの3つ巴が追う構図となる。各社ともエネルギー密度やコストパフォーマンスの高さに定評があるが、LG化学においては供給先の蓄電システムメーカーが4社ほどあり、こうした採用数の多さが決め手となってシェアを獲得している。

19年度Q1、各社出荷増ペース

 以上、昨年度の市況を見てきたが、注目すべきは卒FIT市場が動き出す今年度の動向だろう。本誌で繰り返し報じてきたが、卒FIT後は太陽光発電の自家消費率を高めれば高めるほど経済メリットは拡大し、仮に100%自家消費できた場合は、何も対策を講じない場合と比べて10年間で約50万円お得になるとの試算もできる。無論、そうした自家消費向上のためのデバイスとして期待されているのが蓄電システムであり、尚且つ災害による停電時の“安心”の価値も含め訴求が進められていくことは言うまでもない。足元の状況はというと、各社とも前年比増ペースとしており、昨年度に続いて需要が更に高まっていることに加え、11月以降の卒FIT生をどれくらい取り込めるかによって上振れ具合が大きく変わると口を揃えていた。中でもニチコン、オムロンはすでに月2,000台超え(OEM、ODM供給含む)で推移。ニチコンでは、新製品投入等による流通整備のもたつきが昨年度後半にかけて解消され、そのまま新年度入りしてからも勢いが止まらない状況という。蓄電システム企画部の山本隆禎部長は「訪販業者が扱い慣れていたシングルタイプ7.2kWhの後継機11.1kWhがスマエネ機器商社向けに特に好調。コスパの高さが効いている。また新製品『トライブリッド蓄電システム』も大手ハウス向けに出荷台数が右肩上がりで伸長している」と概況をまとめ「盤石な商流を築いてきた。あとは調達や生産体制を強化し足元をしっかり固めていくだけ」と自信をみせる。卒FIT生には、太陽光発電のシステム変更なしで簡単に後付け可能なシングルタイプを中心に仕掛けるが、新たに4kWhと16.6kWhの容量帯をラインナップし様々なニーズに対応していく体制だ。オムロンも同様に4.2kWhのシングルタイプをこのほど追加し、大・中・小のフルレンジを揃え卒FITに対し攻勢に出る。「小型軽量で柔軟な設置性があることの訴求ポイントをさらに押し出していく」とし、詳細は明かさなかったが「卒FIT生への何らかの販促プロモーションをかける」(大橋課長)と含みを持たせていた。2社に追随するように月1,000~1,600台規模を出荷するのは、シャープ、パナソニック、長州産業、伊藤忠商事の上位常連組である。19年卒FIT生30万件を抱えるシャープでは、すでに同ユーザー向けの出荷構成比が4割まで上がっている。「電力会社によるFIT切れに関する個別通知がスタートしてから、ユーザー側から販売店へ直接問い合わせがあるケースが増えてきている。昨年度には全国各地の販売店を経由し2,000回の勉強会を開催したが、今年度も引き続き開催し太陽光OB客を取り込んでいく」(五角統轄部長)とする。こうしたユーザー側から蓄電システムへ関心を寄せる動きは11月にかけて一層強くなっていくものとみられるが、伊藤忠商事エネルギー・化学品カンパニー工業原料化学品部電池ビジネス課でも「今後、ユーザー向けのアプローチは更に強化していく方針である。と同時に、停電時の全負荷、200V対応をはじめ、AI搭載や価格設定も含め高い商品力が訪販業者の売りやすさ、営業トークのしやすさに繋がっているとみており、そうした販売店向けの販促ツール制作にも注力していく」と述べ「現在、数千台規模のAI搭載蓄電システムが導入されている状況だが、ちょうど今もAIが各家庭の電気の動きを学習している。この実測データベースに基づいた経済メリットを算出しユーザーに提案できるような仕組みを構築しているところ」とする。AIを謳った製品としてはシャープやパナソニック等も同様に展開しているが、いずれもAIを活用することで、気象予報や各家庭の電気使用量を学習し、太陽光発電の電気を売電するのか自家消費(充電)するのかを自動で上手く使い分けて運用できるようになる。つまり、売電か自家消費か日によってどちらがお得かを判断できるようになり、少しでも経済メリットが高まるわけだ。そんな中、パナソニックでは蓄電システム導入を必須とする業界最高値16円/kWhの卒FIT売電プランをNTTスマイルエナジーと協業で打ち出したほか、シャープでは丸紅ソーラートレーディングと組み、最大14.6円/kWhとするプランを発表。卒FIT売電プランと蓄電システムの組み合わせにAIを活用した提案術にも注目が集まる。19年卒FITユーザーの約2割を有するパナソニックでは「暮らしに合わせて3.5kWh~11.2kWhまで選べて増やせる業界最大となるバリエーションを揃えたところ。パワコンの変更時には他社製の太陽光パネルであっても、太陽光パネル含むシステム全体を15年自然災害補償(有償、シャープ製パネルは検証中)できるようにした」(中嶋SBU長)とあらゆるニーズに対応する準備を整えた。一方で太陽光パネル出身のメーカー勢にとって卒FITはもちろんだが、それ以前に太陽光発電の継続的な普及という使命も担っていく必要がある。従来から太陽光発電とのセットでコンスタントに出荷してきた長州産業ではVPP補助金などを足掛かりとして蓄電池販売に新規参入する特約販売店が増え、主力ルートの層が更なる広がりをみせている。早崎直樹エネルギー機器本部長は「昨年度の勢いのまま、主力特約販売店を中心に堅調に推移している。太陽光発電の蓄電セット率をアップさせていくスタンスは崩さず、卒FIT向けに用意したシングルタイプとバランスよく両輪の展開を進めていく」としていた。

時機を窺う業界ビッグネームたち

 メインプレーヤーの動向をみてきたが、市場の更なる押し上げは新興メーカーの登場・活躍によって図られることは言うまでもない。市場で定着しつつある顔ぶれの中に食い込む可能性の高い面々は、デルタ電子、住友電気工業、村田製作所、そして別途詳報の中国CATLと協業を公表したネクストエナジー・アンド・リソース等が考えられ、いずれも注目株になりそうだ。各社とも商流構築が焦点となっているが、急速な拡大は狙わず年間2,000~3,000台規模と堅実な歩の進め方をしているのが特徴だ。実際に、台湾大手パワエレメーカーのデルタ電子エナジーインフラ営業本部の宮崎偉生副本部長は「新築有力ビルダーや外資系太陽光パネルメーカー、エネルギー商社など商流づくりを行ってきた。顧客サポート含め、目の届く範囲でじっくりと進めていきたい」とし、小容量システムで攻める住友電気工業においては、太陽光パネルメーカーへのOEM供給のほか、あまり他社の色が付いていないスマエネ機器、電材、建材系商社への販路を順次拡大。パワーシステム研究開発センター機器・システム部の上田光保分散電力グループ長は「小型軽量、小容量で価格的にも手軽に始められることから、蓄電池販売に関心を持ち始めたばかりの商社が多い」と話す。村田製作所は1月にJET認証を取得し、大手スマエネ機器販売商社の採用が進みパッケージとして市場に流れ始めている。モジュール事業本部エナジーシステム統括部の高野康浩統轄部長は「小容量・コンパクト・長寿命のコンセプトでのブランド浸透が今年のテーマ。信頼と認知度の向上を図っていきたい」と意気込む。こうして2019年を商機と見て勢いづく各メーカー。卒FIT向けの動向によってはセカンドブレイクとなり得るほど底知れぬ需要が期待されるわけだが、果たして同需要に供給サイドがどこまで対応できるかが課題としてある。とりわけ、システムの構成要素となるリチウムイオン電池においては、電気自動車向けを中心に世界的な需要の高まりをみせており、いつ逼迫するか分からない。ネクストエナジーのように新規電池メーカーと組み、調達リスクをヘッジする動きも必要になるかもしれない。そんな中、新たにGSユアサの採用が一部で広がるほか、香港ATLを傘下に持つTDKも電池メーカーとして定置用蓄電市場に参入の意思を示している。加えて、京セラでは、出資関係にある半固体リチウムイオン電池の研究・開発を手掛ける24MTechnologiesの技術を用いた電池生産工場を建設中で、大阪府内の大東事業所でパイロットラインを今年内にも立ち上げる。経営推進本部エネルギー事業戦略室の戸成秀道エネルギー事業戦略1部責任者は「使用部材の削減、製造プロセス簡略化で価格競争力のあるものとして進めている。まずは自社蓄電システムへの採用を検討していく」という方針のようだ。安定したリチウムイオン電池調達のため、グローバルな視点で既存電池メーカーの需給状況や増産計画を把握しつつ、新規電池メーカーの動きも捉えた情報戦が今後繰り広げられそうである。今回、2018年度の市況感と19年度の各メーカー動向および見通しを詳報したが、周知のとおり同市場では訪販業者を中心に20万円/kWh前後で販売されている。早稲田大学の矢部邦明准教授によると蓄電システムの寿命を15年としたとき9万円/kWh、季時別料金の設定であれば5~6万円/kWhで投資回収可能としているが、つまりは、現在の普及は投資回収以外の太陽光発電の有効活用や“安心”の価値が求められた結果との見方もできる。また19年以降も卒FIT市場は20~30万件増ペースで形成され、同市場に加え将来的にはVPPや家庭間で電力取引ができるP2Pの仕組みが期待される。同世界が到来するまでに如何にインストール数を積み上げ、それを束ねて制御可能な技術を構築できるか。次の新たなビジネスとして各社とも構想は一致していることだろう。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.55に掲載したものより抜粋しています。

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