各電力会社から卒FIT価格がいよいよ出揃い、2020年には発送電分離を控えるなど、政策によって電力市場の競争激化が予想されている。そんな多様化する我が国の電力市場で、エネルギー機器業界は今後どんな新たなビジネスに着目していけばよいのか。蓄電池販売コンサルを手掛けるユアエナジーの飯川悦広社長は「近い将来、各家庭に普及した蓄電池、それも普段使いとは別に非常時のために2~3割確保している電気が、新たなビジネスの鍵となるだろう」と予測している。
現在、電力自由化という電力システム改革により新電力会社が参入し、競争原理で電力価格低下が目指されている。同改革の最終は2020年の発送電分離で、これにより送電網の利用において公平性が増し、大手電力会社も新電力会社も同じ土俵で価格競争が繰り広げられることになる。「ところが、発送電分離後の同じ土俵となっても大手電力会社が有利であることは変わらない」と飯川社長は話す。電力市場では、夏場や冬場に電力需要が一気に膨らむと、電力のスポット市場価格が高値に張り付く。この時、安定した発電所を持たず日本卸電力取引所から調達することが多い新電力にとっては、高値が付いた電気を仕入れなければならず、出血は避けられない。一方の大手電力会社は、火力や原子力等の安定した電源をまずは自前で調達するため、スポット価格が上昇しても、比較的傷口は浅く、新電力に比べて有利といえる。
ただ、昨今の情勢では、火力発電はCO2削減の課題が浮き彫りになっており、原子力発電は、テロ対策工事が稼働継続の大きな問題になりつつあり、再稼働した原発についても相次いで停止が求められる可能性があるといった声もある。こうした中で大手電力会社はスポット市場価格に対応していかなければならず、新電力ともに何らかの不安要素があることに変わりない。「そこで解決するのが蓄電池を活用したビジネスモデルである」と強調する。
では電力のスポット市場で、どう活用されるのか。「蓄電池は(メーカーによって様々だが)非常時のための電気を2~3割残しながら利用する場合が多い。いわば非常時のために“待機している電力” だが、この待機している電力に大きな価値が生まれる。普段は未利用の眠っている電源を束ねて制御し、安定した巨大な電源としてスポット市場に充てるのだ。無論、災害時は家庭で使用し、当初の目的を果たしてもらう」と語る。ポイントとなる待機している電力の活用だが、例えば、同電力をコントロールする権利を、電力会社が価値としてユーザーから取得することで、安定した電源を安く仕入れることができ、一方で、災害時以外に使い道のなかった2~3割の電気を価値の対価として販売することができる。
「言うまでもなく、ユーザーと電力会社の両者を取り持つプラットフォーム会社こそ、電力市場のゲームチェンジャーとなり得る。10kWhの蓄電池で3kWhを非常時確保容量とすれば、10万台を束ねると30万kWh。蓄電池をAI制御できれば、AIが電力のスポット市場価格の高騰を予測し、どこの待機している電力を、どこの地域へ融通するかを自動で判断する。こうした電力市場の新たな在り方が、すぐ目の前まで来ている」と語っていた。
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.54に掲載したものより抜粋しています。
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