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住宅は省エネ・温熱環境の 性能数値競争から長期に維持する時代へ

 省エネ基準適合住宅をはじめ、長期優良住宅や認定低炭素住宅、ZEHといった高性能住宅では、新築してから数十年以降の省エネや温熱環境の性能を如何に担保できるかが課題となっている。躯体は十分に持ったとしても、性能を保つことができなければ、住み続ける施主にとって、快適・健康・省エネにおいて大きな負担を強いることになるからだ。住宅供給者は、長期的に安定して性能を維持させていくためにも、特に断熱性能の経年劣化を考慮した設計を心掛けていかねばならない時期に来ている。
 こうした住宅における長期性能維持の重要性について、今後、高性能住宅の普及を担うビルダー・中小工務店はどう考えているのか。全国約3000社の中小工務店を束ねるJBNで理事及び環境委員長を務める久原英司エバーフィールド社長に訊いてみた。

―まず、高性能住宅を供給する上で、省エネや温熱環境の性能を維持することについてどのように考えているか

 日本の標準的な住宅の寿命は約30年、長期優良住宅であれば80年~100年と言われている。しかしながら、それは構造躯体が耐える年数であり、省エネや温熱環境などの性能まで含めた年数を表しているわけではない。本来ならば、10年目、20年目といった節目に住宅が持つ性能がどうなっているのかを検証していく必要があると考えている。仮に、長期優良住宅を標準的に建築しているのであれば、50年目以降が勝負といったところだろうか。というのも、省エネや温熱環境の性能が落ちてしまうと、構造躯体は何ともなくとも、住み手側は入居当時と比べ「寒くなった、暑くなった、光熱費がかかるようになった」と感じてしまうことが大いにあり得るからだ。「寒い、暑い、光熱費がかかる」は、住宅を建て替える3大要因であると考えている。クルマの買い替え等で見られるような「格好の良し悪し」や「時代遅れ感」などを理由に、建て替えたりしない。性能が極端に落ちることで、結果として住み手に大掛かりなリフォームや建て替えなどの負担を与えることになるので、高性能住宅を設計する際は、如何に快適・健康・省エネな空間を長期的に維持することが重要であるかを意識しなければならない。

―それでは、住宅の性能の劣化を抑え、長期的に維持するにはどうしたら良いのだろうか

 省エネや温熱環境の性能を担保するのは断熱材であることは言うまでもないが、その劣化を完全に防ぐことは難しい。そのため、どれくらい維持できるのか、または劣化するのかを考慮して設計することが望ましいと考えている。繊維系断熱材の場合は、施工不良による性能劣化が見られることがあり、施工者の熟練度次第と言われているが、とりわけ発泡プラスチック系断熱材は、フォーム内のガスが徐々に抜けて断熱性能が劣化することが明らかになっている。つまり、発プラ系断熱材は素材そのものの経年変化が避けられないとされている。ところが、現在は製造出荷時の断熱性能のみが表示されており、我々工務店は、それを元に省エネ計算をしなければならない。そして、そもそも劣化すること自体、知識がない工務店も数多く存在するのが現状としてある。

―なるほど。では、これからはどのような断熱材が求められるようになるのだろうか

 透湿防水シート等では、50年後相当の耐久試験を行い、その劣化が軽微であることを確認し、JIS規格として規定している。本来ならば、断熱材も同様に長期性能のJIS規格表示を規定することが然るべき姿ではないだろうか。例えば50年後を想定する性能値や、あるいは劣化係数といった指標が定められると良いかもしれない。これに加えて(木造住宅に関しては)木材に調和するような断熱材を求めたい。持論にはなるが、木材は息をしているからこそ、長く持つものだと思っている。構造躯体に使用される木材を長持ちさせるような、出来るだけ木材にやさしい断熱材があれば良いのではないだろうか。自然素材である木材に対しては、やはり自然素材をあてがうことが有用だと思うので、自然素材に近い断熱材を使用していくことが、木材を長持ちさせる意味で有効的かもしれない。今は、断熱材における開発の目は断熱性能(熱伝導率)向上に向いている。だが、今後は、そうした数値競争ではなく、長期性能や、木材に寄り添った断熱材の開発にベクトルが向くようになれば、新築してから数十年以降の性能が如何に重要であるか、その考え方が広く浸透していくのではないだろうか。

―具体的には、住宅業界にどのように浸透させていくのか

 これら断熱性能の劣化による、省エネ・健康・快適の性能低下については、今後、JBN環境委員会の中でも積極的に取り扱っていきたい課題だと考えている。それぞれの工務店がどう判断するかは、各設計思想などに委ねることになるが、より多くの工務店に情報を共有し、周知させるべきだと思っている。さらに、国の誘導策も不可欠であると考える。ZEH支援事業といった施策によって、住宅の省エネ化が進んだことは事実である。今ではZEHの上位版としてZEH+などの新シリーズが加えられ、更なる省エネが図られている。これと同じように、例えば、長期優良住宅において、構造躯体だけでなく温熱面の長期的な性能を維持するものを上位版として設定するといった誘導策があることで、長期性能の考え方はより普及していくのではないかと思っている。これまでスクラップ&ビルドで経済発展してきた経緯もあるが、もうそういった時代ではなくなってきた。良い住宅を長く使おうという転換期に来ている。施主目線に立って、最小限のリフォームで済むような、構造躯体、性能ともに劣化の少ない住宅を供給していくことが、今後高性能住宅の普及を担うビルダー・工務店にとって生き抜くヒントになるかもしれない。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.50に掲載したものより抜粋しています。

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