「温かい家」は寿命を延ばす―。そんなフレーズで医学的な知見から、健康長寿と住宅を結び付け、癒しの住宅づくりを応援すべく、セミナーやイベントで大活躍する人気医師、江里健輔医学博士。住宅と健康について医療の観点から語れる医師はまだ少ないが、江里名誉教授は一般社団法人 健康・省エネ住宅を推進する国民会議(村上周三会長)で副会長も務めており、その活動の影響力は大きい。今回は、住宅と健康寿命についての関連性について語ってもらった。健康住宅について半信半疑のビルダーは必読である。
健康寿命と平均寿命の差 =自立できない生活期間
まず、はじめに江里名誉教授が話すのは、寿命は平均寿命と健康寿命に分類できるという点についてだ。「健康寿命を長くすることがとても大事。健康寿命と平均寿命の差が長ければ長いほど、自立できない時間、つまり介護や入院の期間が長くなる。第三者に迷惑をかけてしまう期間でもあり、費用もたくさんかかってしまう。そう考えれば健康に過ごせる寿命を平均寿命に近づける努力が必要だ」。〝突然死″や高度な病的障害は次の3つの代表疾患を原因に起こる。 ① 心疾患、② 消化器疾患、③ 脳疾患(クモ膜下出血、脳出血、脳梗塞)、冬の死因の6割が心疾患と脳疾患の循環器疾患である。特に、例えば、心臓の血管の冠動脈の径は約7mmほどだが、動脈硬化になると、粥腫という豆腐のからのようなもので埋まっている。血液の流れる空間が25%以下になれば、労作時に胸痛のような症状が出る。「人は疾病を伴う原因として、生活習慣要因、外部環境要因、遺伝要因、医原性要因から構成されるため、このような疾患を防ぐには、生活習慣を改善する必要があり、動脈硬化を防ぐことができれば、健康寿命を延ばすことができ、寿命に近く元気でいることができる」。
医学的にも求められはじめた 健康住宅の必要性
生活習慣のゆがみが高血圧を引き起こし、血圧を上昇させ、動脈硬化を起こす。動脈硬化が起こると、血液の流れる抵抗が増え、高血圧になるという。「この悪循環により、次第に内腔が狭まっていき、血管が詰まり、先述の疾患が発生する。これらの要因については、従前から、食事、酒、たばこ、ストレスが大きな要因と言われてきたが、最近では住宅環境もキーワードの一つとして挙がるようになった」。健康寿命を延ばすために、生活習慣を改善する必要性、そして、住宅環境の改善が疾病の発症要因となっていることを述べる。「例えば、寒冷な住まいの10年後の高血圧発病確率として、18℃以上と未満で発生率が6.7倍になるデータがある。住まいと断熱の重要性は表を見れば明らかだ。健康な身体を寿命に近い年齢まで維持することは、幸せであることはもちろん、医療費の削減にもつながる。一部の建築者や医学研究会では認知されていることだが、まだまだ建築だけでなく医療業界に従事する者においても理解されていない」。寒い部屋よりも暖かい部屋の方が高血圧発病確率は少ないが、今まではそれを実証する肝心なデータが、医者の発表する正式な研究結果が少ないことも付け加えた。「全国の住宅メーカーの方々にお願いしたいのは、家を建てたり、リニューアルされる要望が来たりした際には、必ず『健康寿命を延ばすような、家をつくってあげます』と言って欲しい。快適さは勿論であるが、健康寿命を延ばす家づくりを目指すことを宣言してもらいたい」。家を売るビジネスの中で、意匠性の高い家、コストメリットある家を提案することも大事であるが、長寿命化が進む今、健康寿命を延ばす家づくり、健康住宅を提供することの必要性を強く訴える。「施主の命あっての住宅です。 ZEHをひとつのキッカケに、住宅と健康の関係性を見直してほしい」と語る。
※本記事は月刊スマートハウス別冊 『ZEH MASTER 2018』 に掲載したものより抜粋しています。
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