18年度より補助金が用意され、大手デベロッパー等が次々と計画を発表するなど本格的な普及が始まった集合住宅版のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、“ZEH-M”。建築規模が大きいだけに、竣工まで時間を要しているが、いよいよ完成品が姿を現し始めた。そこで編集部は早速、できたてホヤホヤのZEH-Mにお邪魔させて頂いた。
最新鋭の設備がズラリ、HEMSで一括制御
ZEH-Mを建築した経緯について、仕事柄業界に精通するオーナーのKさんは「以前の家が築40年を迎え、建替えを決意した。しかし年齢的にローンを組むのが難しく、賃貸併用で家賃収入をローンに組み込む方法が現実的だと考えた。もともとZEHを検討していたが、集合住宅版の補助金が用意されることを知り、ZEH-Mに取り組んだ」と語る。建築を手掛けた大和ハウス工業大阪中央支店なんば展示場の外山朋矢店長は「当社では他にもZEH-Mを手掛けているが、大阪において賃貸併用住宅では初めてのケースであった。賃貸併用の専用商品を用意しているが、ゼロエネ達成には高い性能が求められるため、標準性能の高い戸建商品を応用した。浴槽の高断熱化や断熱材の厚みを増やすなど細かい調整を行いNearly ZEHを実現できた」と振り返る。同規模の賃貸併用住宅のケースでは通常、半年程度で引き渡しが完了するが、今回は補助金などの申請業務も含め通常の期間以上を要しており、オーナーの理想を反映した上でZEH-Mを設計する難しさが伺える。
とは言え、そんな背景がありながら完成した『ゼム湯里』は、現在ただでさえ珍しいZEH-Mの中でも、類を見ない物件となっている。その特長は何と言っても、豊富なスマート機器や設備が搭載されていること。太陽光発電などZEH-Mの構成機器はもちろん、1階の部屋には文化シヤッター製の電動ブラインドやシャッター、共用部には宅配ボックスも導入している。給湯機もエコキュート、エネファーム、エコジョーズと、設置スペースと省エネ設計を鑑みて使い分けている。これらスマエネ機器は、各部屋に導入している河村電器産業製のスマート分電盤に集約し、三菱電機製のHEMSで制御できるものとなっている。V2Hや蓄電池については、オーナールームに繋がっているが、停電などの際には、入居者は屋外の非常用コンセントを利用することができる。
物件検索時に不利なZEH-M 、「経済メリットを訴求できる環境整備が必要」
ZEH仕様の快適・健康性に加え、スマート機器による利便性や安心性、さらに「女性の方にも選んでもらえるように洗面・化粧台は広めにとっている」(外山店長)といった空間デザインも備える『ゼム湯里』。これだけの性能を備えていれば、同地域の人気物件ともなりそうだ。しかし現時点では、まだ入居の成約はない状況だという。Kさんは「ネックとなっているのは、やはり家賃。1LDK・43㎡で月7.7~7.9万円という額は、この地域の相場より1割ほど高い。内見して貰えば、良さを感じてもらえると思うが、家賃の高さから物件検索の時点で弾かれているのだろう。住宅の性能、いわゆる“燃費の良さ”など、 ZEH-Mのメリットが消費者に伝わるものさしが欲しい」と語る。省エネ性能や高断熱は、実際に住んでみなければ認識できない要素。ZEH-Mの普及にあたり、検索サイトへの反映は急務と言えそうだ。Kさんは「高性能な仕様は、築年数を経る度に他の物件との差が出る。長い目で運用していきたい」と意気込みを語る。
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.51に掲載したものより抜粋しています。
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