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常態化する自然災害今、考えておきたい防災・減災ソリューション

ZEH・LCCM 特集・連載 2019/11/01 18:00

 地震、大型台風、ゲリラ豪雨など数十年に一度といわれる自然災害が常態化してきた。住宅業界は一体何を志向すべきなのか。本項ではZEHに備わっているレジリエンス性に加え設備機器による+αの要素を深堀りしていく。

耐震から電力レジリエンスへ動き出した防災対応型ZEH

 従来の感覚では耐震性の向上が焦点となってきたが相次ぐ停電や断水の対策に住宅業界では、防災対応型ZEHの提案が加速している。

国土強靭化が本格化

 日本は、過去の数々の甚大な災害によって、膨大な労力と国家予算をかけて長期間にわたる復旧・復興を繰り返してきた。今後、こうした流れを避けるためにも、ヒト、経済、社会への被害を最小化し素早く回復する「強さとしなやかさ」を備えた国づくりが必要であるとし、2013年12月に施行されたのが国土強靭化基本法である。その後、国土強靭化基本計画が閣議決定され、5年にわたってリスク把握や対応方策等を取りまとめ、また全国の都道府県における国土強靭化地域計画の策定なども経て、いよいよ本格的にインフラを中心とした防災・減災対策を実行する段階に入っている。キーワードとなっている国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)だが、これは今後起こり得る大規模災害などに対して、①人命を守り、②国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず、③国民の財産及び公共施設の被害を最小化し、④迅速な復旧・復興を可能とする国をつくるというもの。あらゆる分野におけるレジリエンスが一つになって国土強靭化が目指されるわけだが、内閣官房国土強靭化推進室の直轄組織となるレジリエンスジャパン推進協議会では「なかでも住まいや暮らしのレジリエンスを高めることは最重点項目の一つであると考えている」とし「耐震や耐火、家具転倒防止等を備えた上で、食糧、水、エネルギー、情報通信の4要素を確保した住宅の普及が、レジリエンス立国を構築する底上げになる」と位置付ける。地域の災害の可能性によって異なるものの、これら対策によって、平時から災害後までクオリティを落とさず生活を継続でき、尚且つ素早く回復可能な住宅が実現できるとしている。「特に、高断熱で太陽光発電等のエネルギー機器を搭載したZEHなどの高性能住宅は、相当のレジリエンス機能が備わっている。地域毎にある強靭化計画との整合性をとりながら、更なるレジリエンスの観点が取り入れられた住宅が普及推進されるためにも、出来るだけ多くの施主に国土強靭化の理解を促し、行動を誘発していきたい」(同)とする。

躯体強化はほぼ達成、第二ステージはエネルギー

 では、実際のレジリエンス強化住宅の普及具合はどうなのか。過去の自然災害に学び、災害データや経験、被災者の様々な声を収集・分析しながら、常にワンランク上の安全・安心を追求してきた大手ハウスメーカーを例に探っていきたい。日本の自然災害のリスクは46.55%(国連大学「WorldRisk Report 2018」)と世界主要国でもダントツに高く、特に地震については2000年以降、マグニチュード6.0以上の大地震が13回発生、今後も30年以内に高い確率で巨大地震が起こることが予想されている。これに対し、各社とも高い耐震・制震構造を開発、標準採用するほか、地震だけでなく豪雨や豪雪、竜巻などあらゆる自然災害への対策を講じるなど“躯体のレジリエンス強化”を進めてきた。もはや躯体構造の強靭化は、大手ハウスメーカーにとって第1ステージといったところで「すでに高いレベルで普及している」と口を揃える。そんな中、躯体構造の一層の強靭化に加え、更なる備えとして、長期停電や断水などの二次災害に対するレジリエンス強化、速やかな生活復旧のためのサポート・対応力への注力など、いわば第2ステージへと移行しているようだ。とりわけ、「平成28年熊本地震」以降の風水害含む災害のうち約9割で停電が発生しており、住宅における電力(エネルギー)のレジリエンス強化の機運は益々高まっている状況である。相次ぐ自然災害対策の一環として経済産業省では『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを活用したレジリエンス強化事業』を新設。『ZEH+』の上位版となる『ZEH+R』という概念を設けた程だ。これは『ZEH+』に非常用室内コンセントの設置や、蓄電システム、太陽熱利用システムを導入し、太陽光エネルギーの夜間有効活用等の措置を講じたもの。主たる居室への非常用コンセント設置については必須要件とし、太陽光発電の自立運転機能をより便利に活用できるようにしたい考えである。このうえで、蓄電システムか太陽熱利用システムの導入を選択、もしくは両方とも導入し、停電時の夜間電気のニーズを満たすレジリエンスが強化された住宅を実現するイメージだ。このほか、住宅エネルギー関連機器の補助事業として『災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金』『給電機能を有する次世代自動車等導入事業費補助金』なども、国土強靭化のための臨時・特別の措置として実施されている。無論、電力のレジリエンス強化を担うのは、太陽光発電、燃料電池、蓄電池、V2Hシステムなどの創エネ、蓄エネ設備機器であることは言うまでもない。業界の先駆けとしては、積水ハウスが2004年に、耐震・免震をベースに太陽光発電、蓄電池によるエネルギーの自給自足機能を装備した防災自立仕様の住宅を開発したことに遡る。その後、各社とも東日本大震災を契機に、省エネと防災の両観点から、ZEHをベースに太陽光発電、燃料電池、蓄電池、V2H等を組み合わせた住宅をそれぞれ展開してきた。直近では、大和ハウス工業、積水ハウス、ミサワホーム、パナソニックホームズ、トヨタホーム、セキスイハイム等が太陽光発電・燃料電池・蓄電池の3電池搭載や飲料水貯留システムを搭載した防災配慮・レジリエンス住宅を販売している。大和ハウス工業では「太陽光発電の自立運転機能だけでなく、新開発の切換盤により燃料電池で発電したものを蓄電池に蓄えられる仕組みにもなっている。長期停電や雨天でも約10日間の電力と暖房・給湯を確保できるものとした」と説明。続けて「耐震性はもちろん暴風時の飛来物対策として防災防犯ガラス、高耐久軽量屋根材を採用。停電時も家族が集まれるような間取りの工夫やHEMSから情報を発信するなど、これまで培ったノウハウを盛り込み災害時のストレス軽減やサービスを柔軟に設計した」(住宅事業推進部)と話していた。無論、年間光熱費の削減率や省エネ性能も高いという。ここで留意したいのは、平時と有事の考え方である。決して有事だけのために創・蓄エネ機器等の導入を薦めているわけではないことだ。当然だが、圧倒的に多い普段使いの中に、防災機能が備わっているとする考え方が重要である。住宅の防災に長く携わる積水ハウスも「防災だけを押し出しても浸透しにくい。省エネ・蓄エネ機能などいつもの暮らしや、平時から利用しているものが防災としても役立つ。つまり、結果として防災住宅の機能を備えているということが望ましい」と述べ「現に、これまでZEHを中心に年間約1万3,000戸を販売してきたが、その殆どは、普段の省エネ・健康・快適の中に、エネルギーのレジリエンス機能が溶け込んでいる。結果として防災住宅と呼べるものとなっている。あとは、日ごろの暮らしの中でできる防災を考え、防災力を高めることを期待する」(総合住宅研究所構造・防災研究開発グループ)と語っていた。

蓄電池、V2H搭載住宅、最大約4日間の長期停電を回避

 普段はゼロエネ、省エネ住宅としての存在感を見せ、いざという時に防災機能を発揮する住宅を目指し、各社とも提案を進めているわけだが、実際に「省エネ=防災」が証明されたケースも見ていきたい。ここでは、積水化学工業が供給した住宅を例に挙げていくが、同社では、ZEHの先の電気を買わないエネルギー自給自足の暮らし方を目指し、これまで20万棟弱に太陽光発電を設置、蓄電池は1万7,000棟以上、V2Hは500棟以上に搭載してきた。そんな中、昨年の北海道胆振東部地震、台風21・24号において、同社調査では1,391戸で停電時の蓄電池稼働を確認したとする。すなわち、昼夜を通じて電気がある暮らしの安心を提供でき、その有用性が明らかとなったわけだ。中には、最大約4日の長期停電を回避した事例もあり「省エネと防災は親和性が高いということが改めて分かった。もちろんベースとなるのは耐震など強固な住宅であることだが、太陽光発電をはじめ蓄電池やV2Hなどのエネルギー機器を利用し省エネを追求することで、同時に防災も追求できることが証明されたのではないか」(住宅カンパニー広報・渉外部)としている。事例として、前頁図表のとおり、北海道胆振東部地震を経験した住宅のケースでは、5kWhのコンパクトタイプ蓄電池でも太陽光発電と連携して約2日間にわたり夜間も含め電力が供給された。翌日の省エネのために、安価な深夜電力を蓄えた矢先の地震発生であったことから、省エネ行動が、結果として防災行動に繋がったとも言える。また、30kWhのEVとV2Hシステムを導入していた住宅のケースでは、台風による停電に備え、近所でEVを満充電にして帰宅したのち、停電が発生。空調だけでなく給湯機やドライヤー、IHクッキングヒーターを含めた調理機器の使用もでき、停電にもかかわらず、ほぼ日常に近い生活を確保できたとした。停電中にEVを接続していた13時間の消費電力をみると合計9.4kWhで、停電復旧後3日間平均の同時間消費電力と同程度であったことから、普段通り電気が使用できたことが証明されている。

災害後、早期復旧への対応力にも注力

 住宅のレジリエンス強化において、もう一つ重要なものが、如何に早期に平時の状態に復旧できるかである。地震などで被災エリアが広域になればなるほど、建物の安全性の確認だけでも多くの時間を要することになり、復旧が大きく後れてしまう可能性がある。ただ、こうした課題に対しても、IoT技術を導入し解決するサービスが既に登場している。ミサワホームが独自開発した震災後の被害状況を把握できる被災度判定計『GAINET(ガイネット)』がその一つである。これは建物基礎に設置した機器センサーが地震を感知・計測し、モニターにリアルタイム震度や被害状況を表示するもの。停電時でも一定時間作動し、躯体の損傷をすぐさま「見える化」できる。平時は室内の温度や湿度を計測できることも特長だ。「判定計を設置することで、被災度に応じた復旧サポートを迅速に行うことができ、どの住宅を優先して復旧すればよいか等の判断基準にもなる。また、省庁や自治体と連携することで、被害状況の周知をスピーディーに行うことができるようになり、街全体の防災力強化にも生かすことができると考えている」(ミサワホーム商品開発部)と話していた。加えて、早期復旧への対応力において、被災時の迅速な保険対応もポイントだ。災害の混乱の中、煩雑な保険手続きを施主が行うことは困難に近い。ワンストップによる手間の少ない保険受付を行い、早期復旧工事のサポートが必要だ。これに関しては、旭化成ホームズを例にとると、被災時の保険対応をサポートするファイナンシャルのグループ会社と、復旧工事の計画と実施を行うリフォームのグループ会社、それぞれのエキスパートが連携・連動し支援する三位一体の体制を整えている。構造を熟知したプロが保険会社との折衝を行う仕組みだ。「提供する住宅はロングライフを追求した頑強な躯体がベースとなっており、修復性の高い建物性能を持つ。そんな修復性の高さに加え、更なる早期復旧のため、保険手続きを含めた災害時サポートの強化を昨年より注力している」とし「実際、西日本豪雨で被災した住宅では、すべて数カ月内にリフォームを完工させ、早期復旧できた」(旭化成ホームズ広報・渉外部広報室)などの実例も述べた。大規模災害に対し、災害時、復旧までを支える住まいづくりを、如何に平時の省エネ・健康・快適と絡めながら提案できるかがカギとなることだろう。

※本記事は月刊スマートハウス別冊 『ZEH MASTER 2019』 に掲載したものより抜粋しています。

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