2030年度に2013年度比で26%削減――。パリ協定を踏まえた温室効果ガス排出量の削減目標の達成等に対し、住宅・建築物の省エネ性能向上を図ることは喫緊の課題となっている。あいにく2020年の住宅における省エネ基準適合義務化については見送りとなったが、同目標達成に向け、これまでに住宅に関する多くの省エネ支援施策が実施されてきた。2019年度においても、昨年度に引き続き省エネ支援施策を実施する予定で、特にZEHに関しては経済産業省、環境省、国土交通省の3省が連携し、積極的に推進していく姿勢が見て取れる。3月5日には、政府によるZEH等3省合同説明会が、都内の砂防会館別館で行われ、各省のZEH等に関する最新の施策動向や支援措置等を説明。住宅供給事業者、住設機器・建材メーカーなど約1200名もの業界関係者が参加し、傾聴した。その中でも防災・減災、国土強靭化対策の臨時・特別措置として、停電時の家庭におけるレジリエンス(防災・減災力)強化を促進する補助事業にフォーカス。省エネ化とともに、住宅のレジリエンス強化について詳報していく。
大規模停電で活躍したZEH
2019年度も経産省・環境省・国交省からZEH関連予算が組まれるわけだが、中でも注目したいのが、経産省が新たに執行する『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを活用したレジリエンス強化事業』だ。現在、制度設計中であるため詳細はこれからだが、同事業の実施経緯や概要等について触れてみる。とりわけ2018年は、大規模な連続災害に見舞われたことは言うまでもない。6月中旬に起きた『大阪府北部地震』や、西日本を中心に広範囲で記録的豪雨となった『平成30年7月豪雨』、観測史上最大の瞬間風速を更新した『台風21号』をはじめとする連続大型台風、そして史上初のブラックアウトを引き起こした『北海道胆振東部地震』など記憶に新しい。特に北海道の全道停電は国内に大きな衝撃を与えた。経産省によると約295万戸にのぼり、約50時間後にほぼ100%復電したとの報告をまとめている。このほか、台風21号では全国計で約240万戸、関西電力管内で最大約170万戸の停電を記録。暴風の影響で電柱1000本以上が倒壊するなど多くの設備被害が発生し、関電管内では、全ての停電を解消するのに約2週間を要したという。続く台風24号においても、全国計で約180万戸、中部電力管内では約102万戸が停電し、すべての停電解消に約1週間かかった。また、200人以上が犠牲となった平成30年7月豪雨では、中国、四国地方を中心に土砂崩れや河川氾濫に伴う停電被害が発生。最大約7.5万戸の停電で、復旧に約1週間を要したとしている。無論、2019年現在も自然災害は頻発しており、その猛威はとどまることを知らない。一方、こうした大規模停電を経験しながらも、自宅が太陽光発電搭載住宅やZEHであったことで電源を確保し電力利用を継続できたとする事例も多く報告された。太陽光発電協会では、北海道ブラックアウトの際に自立運転機能を活用した実態について調査を行い、住宅用太陽光発電ユーザー428件のうち約85%が自立運転機能を活用したとし、蓄電池を併設しているユーザーにおいては〝停電であることに気づかなかった〟という。経産省では、北電・関電管内でのZEH補助件数は12年から17年までの累計で4456件としているが、ZEH居住者からは「安否連絡や情報収集に必要なスマホを充電でき、安心感を得た」「昼間だけでも炊飯器や冷蔵庫の電源を入れ、食料を有効活用できた」等の意見があったことをまとめている。
自立しやすいZEH+を活用
そんな昨年の大規模災害を受け、政府は防災・減災に関する臨時・特別の予算を設け、レジリエンス強化のための支援策を講じる方針を示した。その一つが、今回の『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを活用したレジリエンス強化事業』である。ちなみに、このほか、住宅エネルギー関連機器の補助事業として『災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助』や、『給電機能を有する次世代自動車等導入事業費補助金』なども、国土強靭化のための臨時・特別の措置として実施予定にある。レジリエンス強化事業では、ZEHシリーズの中でもZEH+(Nearly ZEH+含む)を活用して、停電時の家庭におけるレジリエンス強化を促進する。省エネルギー課の田中宏和課長補佐は「ZEHが備える省エネ性能を更に高め、再エネの自家消費を拡大することを目指したZEH+は、系統から自立しやすい。もともと停電に強いZEH+を活用して、更にレジリエンスが強化された住宅を支援できないかと考え、予算を組んだ」とする。事業予算は約20億円で、採択件数は約1150件を想定している。ZEH+に非常用室内コンセントの設置や、蓄電システム、太陽熱利用システムを導入し、太陽光エネルギーの夜間有効活用等の措置を講じる。耐震強化の必要性も問われるところであるが、同事業は飽くまでエネルギー政策の一環における停電時のレジリエンス強化であるため、要件には含まれていない。しかしながら、当然、災害時対応の観点から住宅の耐震性も高めておきたいところである。
非常用コンセント設置が必須、125万円/戸から
詳細はこれからだが、補助要件をみると、主たる居室への非常用コンセント設置については必須要件とする方針で、太陽光発電の自立運転機能をより便利に活用できるようにしたい考えである。「非常時に太陽光発電のパワコンから電源を取り出せるわけだが、情報収集や携帯充電など電気を利用する多くは主たる居室で行われることが想定される。それを勘案し、同室の設置を必須とすることを検討している」(田中課長補佐)と説明する。このうえで、蓄電システムか太陽熱利用システムの導入を選択、もしくは両方とも導入し、停電時の夜間電気のニーズを満たすレジリエンスが強化された住宅を実現するイメージだ。なお、蓄電システムについては、非常時に確実にレジリエンスを発揮することができるよう、売電優先や自家消費優先など運転モードの切り替え等について制度を詳細に詰めている状況である。暫定では、ZEH+補助金115万円/戸に対し、レジリエンス強化事業は、非常用コンセント設置を必須要件に1戸あたり125万円からを想定している。これに、蓄電システムか太陽熱利用システムのいずれか(もしくは両方)を採用することを要件とし各補助費用が上乗せされる。応募多数の場合は抽選方式を実施する。加えて、同事業は臨時・特別措置の予算枠であるため、現時点では2019年度のみの実施を予定している。「公募時期は5月を目指しており、防災・減災の緊急対策として早急な普及を目指したい」(田中課長補佐)とする。年々常態化する自然災害に対し、住宅の防災・減災対策は強く求められるようになっている。同補助事業を皮切りに、住宅ひいては街全体の強靭化が期待されそうだ。
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.50に掲載したものより抜粋しています。
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