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次代はZEHからLCCM住宅へ

ZEH・LCCM 特集・連載 2019/11/01 18:00

 我が国が目指す最上級の住宅の在り方とは何か。ZEHの普及もさることながら次代の概念は既に動き出している。

ZEHに通ずる省エネ設計+長寿命化でクリア可能

 ZEHの先にある究極のエコを目指した住宅がある。LCCM住宅だ。LCCMとはLife Cycle CarbonMinu(s ライフサイクルカーボンマイナス)の略称で、国土交通省所管の建築研究開発機関、建築研究所の言葉を引用すれば「住宅の長い寿命の中で、建設時、運用時、廃棄時においてできるだけの省CO2に取り組み、かつさらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時のCO2排出量も含め生涯でのCO2収支をマイナスにする住宅」である。イメージとしては図のとおり。一般住宅の場合、まず建築時に材料の製造エネルギーや輸送、建設現場でのエネルギー使用によりCO2が排出される。運用(居住)中には、暖冷房、給湯、照明、家電・調理等でエネルギーを使用することでCO2を排出し続け、更に十数年毎に改修を行えば部材交換等でまたも排出する。つまり、CO2収支でいうと増加するばかり。一方ZEHは、家電・調理等のエネルギーを含まないことを留意しておきたいが、運用時のエネルギーがゼロとなるためCO2を排出しない。とはいえ、改修時の発生は避けられず、累計CO2排出量は増えてしまうため〝ライフサイクルCO2(LCCO2)〟という観点においてはZEHレベルでさえ十分とは言えない。その反面、LCCM住宅は、運用時のエネルギー消費を大幅に削減するとともに、その消費量を上回るような太陽光発電を導入することで、建築時に発生したCO2を運用時の余剰エネルギーにより年々返済する。改修時に一時増えるものの、一定年数の経過でマイナスとなる。この究極の省CO2を実現するLCCM住宅こそ、政府が省エネ基準の説明義務化やZEH標準化を視野に入れている中で、最終的に行き着く日本の住宅のあるべき姿とされている。日本は脱・炭素化に向け、2030年度に家庭部門の温室効果ガス排出量を13年度比で39%削減する目標を掲げているが、同目標達成における期待のホープとして本格普及が急がれている。肝心の普及状況については、国交省を主体として研究開発が進められたのが2009年頃。11年からLCCM認定制度がスタートし、翌12年には認定取得第一号(申請者:大阪ガス、設計施工:積水ハウス)が誕生。以降、認定数はじわりと広がってきている。ちなみに支援策としては国交省「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」および「地域ビルダーLCCM住宅先導プロジェクト」がある。とはいえ冷暖房や給湯・照明など特定の設備の年間一次エネ消費量をゼロ以下とするZEHに対し、建築から廃棄、運用時には家電や調理等によるCO2排出量も加味されるLCCM住宅の設計は途方もなく難しそうに思われる。評価指標においても、ZEHが一次エネ消費量に対し、LCCM住宅がCO2排出量とモノサシが異なり、一からノウハウを積み上げなければならない様にも見えるだろう。しかし実際の設計については「LCCM住宅の性能要件は強化外皮基準や高効率設備による省エネなどZEHと共通している。ZEHと比べて少し努力が必要な部分は、LCCO2(ライフ・サイクル・CO2)の算定結果がゼロ以下になるだけの太陽光発電の搭載が必要なことや、屋根材・外壁材などの材料選定を考慮し長寿命化を図ること」(IBEC建築環境部)と決してハードルは高くない。

ポイントは太陽光発電の大容量化

 では、LCCM住宅の実現には具体的にどんな対策が必要なのか。各材料・機器等により大きく異なるが、基本的な考え方を示すと、①まず天然乾燥やバイオマス乾燥による木材や、高炉セメントを使用した基礎コンクリート、製造時のCO2排出量が少ない建材や機器を採用し、建設時CO2発生を抑える。マイナスとなるまでの期間に影響するため、出来るだけ減らしておく。②次に外皮の断熱性能向上や高効率設備、創エネ機器を搭載し、運用時の排出量削減を目指す。この点はZEHと同等の設計であり、ZEHビルダーならば造作もないはず。ただし建設時CO2を償却するために、消費エネルギーを大幅に上回る創エネ設計が必要だ。③加えて、耐久性の高い外装材・内装材を採用する。躯体の更新範囲を極力少なくし、維持・修繕時の排出量を抑える。④さらに、建物の長寿命化対策として躯体劣化軽減や耐震等の措置を施すことも欠かせない。仮に30年と90年の躯体寿命では、30年の方がCO2マイナス達成までの難易度が極端に上がってしまう。長寿命化対策も軽視できない部分である。以上から、ざっくりとした表現となるが「長期優良+(家電等含めた)ZEH+太陽光発電の追加」といったイメージが描ける。長期優良住宅、ZEHと順を追って技術力を高めてきた事業者にとっては、創エネとなる太陽光発電の大容量化がポイントであると推察できる。ZEH推進協議会では「標準的な地域では、省エネ率30%以上の住宅に5kWの太陽光発電を搭載するとZEHとなる。計算上はさらに約3kW加えるとLCCM住宅が実現できる」としている。であれば、これまでZEH実績を残してきたビルダーなら十分に対応できる範囲ではないだろうか。

部材選定等の工夫で太陽光発電頼み解消も

 一方で太陽光発電頼みを一定程度解消する方法も提唱され始めている。先に指摘したとおり生涯を通じてマイナスに持っていくためには、相応の創エネルギー量が必要であり、決め手はやはり大容量の太陽光発電システムを搭載することだろう。しかし大容量化するほど、要する屋根面積や初期費用においてハードルが高くなる。普及を図る上では、設計の工夫により適度に容量を抑えた上で達成させることが必要なのは言うまでもない。建築環境・省エネルギー機構(IBEC)では定期的に『高性能省エネ住宅の設計講習-ZEHからLCCM住宅へ-(木造戸建)』と題したセミナーを実施。まさにこの設計のテクニックについての伝導を行っている。ここではLCCO2算定結果がゼロ以下=LCCM達成の前提として「消費されるエネルギーを上回る発電量が必要」と説明されるが「太陽光発電の容量はできるだけ小さい方が、建築ハードルは低くなる。そのためには住宅の寿命を伸ばすことがカギ。長寿命化により、その間に発電できるエネルギーが増える。また改修期間をできるだけ長くし、改修時に発生するCO2も可能な限り抑えることも重要」との考え方を指南している。「ZEHをはじめとする省CO2住宅は、評価指標となる基準から高断熱や高性能設備によって省エネを図り、最後に太陽光発電による創エネで相殺しゼロ以下とすることが基本ではあるが、基準自体を緩和させることも重要な要素となってくる。極端に言えば小さな建物ほど有利になる」(砂川建築環境研究所)。例えばビルトインガレージなど複雑な形状となる建物は、シンプルな立方体形状の建物と同じ床面積でも外表面積が異なり、その分、省エネを図る努力が必要になる。無論、施主の希望と両立させることが前提ではあるが「リビング(主たる居室)や開口部の面積を調整することも大事」とのアプローチ方法が紹介されている。このほか、屋根材や外壁材の選定によるCO2排出量の増減幅、ZEHに通ずる給湯機や冷暖房、換気、照明の種類別の一次エネ消費量比較などノウハウが蓄積され始めている。ZEH経験者の次なるステップとして積極的な取組に期待したい。

※本記事は月刊スマートハウス別冊 『ZEH MASTER 2019』 に掲載したものより抜粋しています。

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