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次代を見据えた上位モデル:徹底解剖!『ZEH+』3つの要素

ZEH・LCCM 特集・連載 2018/11/01 18:00

 ここまで『ZEH』の定義や最適仕様についてみてきたが、『新・ZEHロードマップ』にて追加された上位モデル『ZEH+(通称:ゼッチ・プラス)』とは何か。自家消費を意識した再エネの促進にかかる措置として誕生したわけだが、一般的なZEH建築をクリアしている事業者にとっては然程難しい話ではない。追加要素は①外皮性能の更なる強化、②高度エネマネ、③EV等対応の3要素のうち2つ以上を採用すること。本頁ではこの3要素を分解し解説を加えていく。

更なる高断熱化経済性と健康性のダブル促進

 住宅事業者にとって3要素の中で最も馴染みのある高断熱化だが、『ZEH+』の「自家消費を意識した再エネの促進にかかる措置」というテーマに対し、健康や快適性に焦点があたる高断熱化が要件に組み込まれていることには訳がある。創エネという概念とは異なり、自家消費向上に直結するものではない様にみえるが、〔ZEHの3大メリット編〕で後述の通り、高断熱化すれば暖冷房エネルギーを抑えられ、他の電気設備等に充てるエネルギーを増やすことができる。つまり、間接的にではあるが自家消費の割合を高められるという意味合いがある。

追加要件はHEAT20 G2グレードに相当
ZEH一般仕様比で約50万円コストアップ


 定められた断熱水準は図表のとおりで、一般ZEH仕様における外皮性能よりも2割程度高い。おおよそ、断熱推進民間団体のHEAT20が推奨するG2グレードに相当する。そのコストはZEH推進協議会資料を参考にすると平成28年省エネ基準から一般ZEH仕様へのランクアップで、材工合わせて約30万円(繊維系断熱材1:開口部1)の価格アップ。さらに、一般ZEH仕様から『ZEH+』の追加要件の外皮強化型ZEH仕様となれば、材工合わせて約50万円増(同)となる。ここ数年で高性能サッシの価格が大幅に下がっていることもあり、導入費の上昇幅はさほど大きくない。今後の断熱建材の更なるコスト低減に期待したいところである。

健康維持・増進効果で医療介護費削減も

 喩え50万円のコスト増になっても居住者へのメリットは大きい(図表)。この試算では、高断熱化による暖冷房のランニングコストの節約はもちろん、設置するエアコンの台数を上手く減らし、およそ10年ごとにかかるエアコン更新費用を抑えていることがポイントとなっている。外皮性能が高いことで得られるもう一つのベネフィットもある。後述の〔ZEHの3大メリット編〕で詳報するが、室内の温熱環境が向上し、住まう人が〝健康〟になるメリットだ。追加要件の水準ともなれば、冬季に洗面所やトイレなどの非暖房室を含む全室の全時刻の室温が概ね13℃を下回らない温熱環境を作り出すことができる(図表)。この室温13℃とは『国交省スマートウェルネス住宅等推進事業調査』において、平均的な男性が高血圧の目安となる家庭血圧高血圧基準135mmHg以下を維持するライン。極論、13℃以上をキープする同水準を満たせば、高血圧、ひいては循環器系疾患の予防につながる。高血圧や循環器系疾患だけでなく皮膚炎やアレルギー等の様々な疾病にかかるリスクも減らせるとされ、健康寿命の延伸や睡眠の質、肩こり、腰痛などが改善されるといったエビデンスも蓄積され始めている。竣工後に抜本的な改善が困難である躯体や外皮は、新築時に高性能材が導入されることが重要である。今後数十年から半世紀にわたり住まわれることを考慮すると、同追加要件はもはや必須といっても良いだろう。

高度エネマネ導入ECHONET Liteで拡がる次代の住まい方

 ZEH+の要件として掲げられている要素は、先の高断熱仕様と次項のEV充電器の設置に加え、高度エネマネの3つ。このうち2つ以上を選ぶことになるわけだが、住宅事業者にとって、最もとっつきにくいと感じてしまうのは、この高度エネマネではなかろうか。いわゆる〝メカ〟に抵抗感や苦手意識を持たれている方、またECHONET Lite、同AIF(以下、AIF)、将来的なVPPなど住宅では聞き慣れないワードが盛り沢山と、何やら敷居が高そうにみえる。しかし、実はZEHと対比した際に最も費用負担を抑えることができるのは、この高度エネマネなのである。というのも、ZEHで利用する機器自体が規格対応しているケースが多いからだ。言い換えれば、対応する住設機器を導入するだけで達成でき、お手軽とも言える。HEMSの接続に慣れた方なら尚更、取組みやすい。ただ一点気がかりなのは、難しそうなワードが並ぶ同要素について、質問された際に答えられるかどうか。そこで本頁では、そもそもECHONET Liteとは何なのかというところから追っていく。

機器間の共通言語を定義様々なメーカー機器と連携可能に

 ECHONET(Energy Conservation and Homecare NETwork)Lite規格とは、センサ類や白モノ家電、住宅設備など省エネのリソースとなる機器のIoT化を容易にし、エネマネやリモートメンテナンス等のサービスを実現すべく構築された通信仕様のこと。同規格を取りまとめるエコーネットコンソーシアムが98年より開発を進め11年に規格化した。エアコン、照明といった住宅に欠かせない設備のほか、太陽光発電や蓄電池などの比較的新しいエネルギー機器など100種類以上の機器の詳細な制御コマンドを定義し、ホームネットワークの構築を支援している。12年には経済産業省がスマートハウス・ビルの普及拡大工程表を策定することを目的とした『スマートハウス標準化検討会』で、家電・住設機器等の通信に用いる公知な標準インターフェースとして推奨。これら背景から公的にも標準的な通信規格として推進され、ZEH補助金の条件として組み込まれているほか、各機器メーカーも対応機器を展開している状況である。以上が簡単な概要と沿革であるが、同規格は一体どういうものなのか。「ECHONET Liteで繋がる」と聞くと、エコーネットという通信手段によって機器間が接続されている様に思えるが実際はそうではない。同規格はあくまで通信言語を定めたものであり、人に置き換えれば「何語で話すか決めよう」といったイメージだ。図で示す様に、A社の通信言語、B社の通信言語とそれぞれ独自のネットワークを構築している中に、他社製品が混在した場合、通信できる能力を持っていても、言葉が通じないため、指令を理解できないケースがある。それを統一したのがこの規格。世界共通言語である英語の様なものと言えば、理解しやすいかもしれない。つまり、通信手段とはまた別の領域を定義したものであり、実際の通信は家庭に普及するWi-FiやBluetooth、有線LANなどで行う。ここでWi-Fi等の伝送メディアは、手紙やメール、電話などにあたる。話す言語が統一されていれば、どの手段でも相手に指令を伝えられる。司令塔となる機器(HEMSなど)が各伝送メディアで通信できる能力があれば、どの通信手段でも連携できるわけだ。

ふるまいの差異を統一するAIF認証試験で接続性担保

 さて、ここからが本題となるが、末尾につくこのAIF(アプリケーション通信インターフェース)とは何か。『ZEH+』の要件は、ECHONET Lite(以下、Lite)ではなく、この上位版、AIFによる通信環境を整えることを求めている。先述の通り、Liteによってメーカーが異なる機器間でも連携が取れる様になった。しかし次なる問題として浮上したのが、指令に対する〝ふるまい(動作)〟がメーカーの機器毎によって異なるケースがあること。Liteでは、エアコンをONにするコマンドを定義していたが、このコマンドを送信する際、エアコンの現在の状態によっては、その動作が望み通りにならないことがある。例えば冷房27℃と設定しても、暖房のまま27℃となってしまうなどが挙げられる。しかし、AIF仕様では、人がリモコンを使って設定することと同じ様に正しく動作させるための手順(シーケンス)まで規定されている。運転ボタンを押してからモードや温度設定をする人、先に各種設定をしてから最後に運転ボタンを押す人など個々によって操作方法は様々だが、こういったコマンドを一括で受け取った際、処理する手順を定めておくことで、望み通りの動作を担保するのである。とは言え、自社の検証のみではエビデンスに乏しい。そこでコンソーシアムでは認証制度を用意。第三者機関による接続試験をもって、接続性の担保をより確固たるものとしている。現在、仕様を定めているのは太陽光発電、照明、蓄電池、EV充電機、給湯機、エアコン、スマートメーター、燃料電池のエネマネ重点8機種のみだが必要に応じて機種の幅を拡げていく構想だ。加えて、『高度エネマネ』の要件を読み込めば〝リリース〟というワードが出てくる。これは新しい機器や要素に対し、対応する新たなコマンドの規定を追加したもの。リリースAから始まり、現在はJまで登録されている。要件にあるリリースIは、エコキュートの昼間稼働による蓄熱などVPPに対応するコマンドを定めている。『ZEH+』要件の補足として「当面は遠隔での制御を可能とし利便性の向上等を目指すこととなるが、将来的には(中略)VPP対応機器・仕様の普及拡大を進めることが望ましい」とあり、リリースは今後の発展性に対応するものとなる。ただ新たな要素が加わるたび、設備を更新しなければならないのかという不安が生まれるが、ソフト面については、スマホの様にHEMSもシステムアップデートで対応できるため、昔のものが使えなくなることはない。

潜在するサービス拡張性スマートライフの実現へ

 AIFによって、接続性が担保されたネットワークが構築すれば、図表のようなソリューションの提供も夢ではない。ZEH+では、今まで機器単独での省エネや見える化(施主による省エネ行動)だったものが、HEMS側で使用電力の増減をコントロールするものとなる。さらにAIFによってその接続性も担保されている。ZEH+の要件に加えることで将来、家庭内だけでなく、VPPの様なコミュニティやシティなど広範囲でエネルギーを効率的に利用できるシステムを構築する狙いがある。ZEHのメリットの一つは、高断熱仕様による健康面の安全性だが、ホームネットワークはここに見守りやセキュリティを加味することができる。安全性の幅の拡大、快適・利便性を向上できることも大きな強みとなる。スマートライフが実現する訳だ。課題としてはHEMSを入れたメリットを関連事業者が施主に説明できる様に周知していく必要がある。加えて、今後目指すべき快適・利便性の向上にあたっては、個人差を吸収できる仕組みや万が一正常に動作しなかった場合の責任の所在などを整備していくことが挙げられる。日々進化し、また更新できる『高度エネマネ』は次代の住まいの可能性を拡げる潜在能力を有する。食わず嫌いでは勿体ない。

EV等連携太陽光の自家消費率を最大化、クルマの燃(電)費向上も

 追加要件3つ目は、今後急激な普及が期待されているEV(プラグインハイブリッド車含む)との連携だ。国内EV普及状況は累計販売約20万台とこれからであるが、世界では既にEVシフトが顕在化し、国内外自動車メーカーも挙ってEV開発を進め、日本では30年までに、国内新車販売に占めるEV(PHV含む)の割合を2〜3割とする目標を掲げている。そんなEVと連携することによるメリットは大きく2つ。太陽光発電の自家消費率の拡大と、クルマの燃費(電費)向上である。

EVのランニングコストはガソリン車よりも4倍お得

 周知の通り、EVには大容量のリチウムイオンバッテリーが搭載されている。家庭内で使い切れなかった太陽光の余剰電力を吸収する大きなバッファタンクとして利用できる。太陽光発電の自家消費率は2~3割程度と言われているが、EV連携はこの比率拡大に寄与する。今後、「売電できない」もしくは「売電するより自家消費する方が得する時代」になれば、より重宝されるだろう。加えて、ガソリン車からEVに乗り換えることでも大きな経済メリットをもたらす。車の燃費と電費で試算すると、ランニングコストはガソリン車よりもEVの方がおよそ4倍お得になるという試算結果もある(右ページ:EVとガソリン車の燃(電)費比較図)。太陽光の余剰電力を充てれば、電気料金上昇や再エネ賦課金負担なく充電することができ、経済性はさらに増す。ただ、中古車市場では24kWhの初期日産リーフが本体価格40万円前後(2万円/kWh)を切る価格を実現しているものの、住宅購入に加えEVも導入するとなれば負担は大きい。そこで追加要件は、現時点でEVを保有せずとも、普通充電器もしくはEVと家の間で充放電ができるV2Hシステムを設置し、適切な漏電対策をするだけで良いとしている。

充電設備は3タイプから選択

 充電設備については関連団体である電動車両用電力供給システム協議会によると3種に大別される。最もコスパが高く汎用性があるものが「充電用コンセント」で、戸建住宅向けに設置する殆どがこれであるという。「充電ケーブル付」は主に公共・施設向けに設置されることも多いが「壁面取付タイプ」は一部、戸建住宅にも導入される。コンセントタイプと性能は殆ど同じだが、充電器本体に初めから充電ケーブルを搭載しているため、利便性に優れる。一方、V2Hシステムは、太陽光発電の電力を直流でロスなく短時間で充電できるほか、EVに蓄えた電気を家側に給電できる特長を持つ。EVを移動手段だけでなく〝走る蓄電池〟として利用できる。充電設備の中で最も高価だがVPPなど次世代インフラ環境下において必要となる設備として位置付けられている。各々の工事費用は新築時に数万円で済むのに対し、既築への後付けは既存分電盤改造や専用分電盤、電気配線などの手間がかかり十数万円と割高になる。だからこそ予め設置することを提案したい。次回車を購入する際、EVを選択するキッカケともなるため『ZEH+』は住宅業界側の施策でありながらもEV普及を担っていると言える。

▷ZEHの3大メリット提案術

※本記事は月刊スマートハウス別冊 『ZEH MASTER 2018』 に掲載したものより抜粋しています。

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