
我が国の伝統文化は昭和歌謡曲の一節になるほど馴染み深い。そして現代は美容と健康。至福のひと時に数えられるが、一昔前までは桶とタオルを携え、足を運ぶのが日常だった。
「今日は何秒浸かれるか。勝負だ!」と競っては〝お馴染み〟の暖簾を潜り、下駄箱をすっ飛ばしては駆け込み、我先にと飛び込む。
「コラ! 危ない。走るな!」
そんな怒号もどこ吹く風。微笑ましい光景に共同体の温かい眼差しが空間を覆った。
と言っても思いのほか彼らは我慢強く無い。
「もう少し」という諭しも耳には入っていない。何故なら真のお目当ては、キンキンに冷やされた甘い液体だったからだ。
斯様な郷愁と追憶は時を経て外から内へ。個人的体験に昇華されていく訳だが、その源流には一つの製品の誕生があった。
「お風呂は人を幸せにする」
戦後間もなく人々の生活水準向上を目指した能率風呂工業(現・ノーリツ)は『さめないタイル風呂』を開発。りんご箱1つの燃料で沸騰させ温度ムラがなく、保温性も高い仕組みを生み出した。これら内風呂は高度経済成長に支えられ瞬く間に浸透。現代文化の礎を築いたのであった。
「い~い、湯、だ、な。あははん―」
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.43に掲載したものより抜粋しています。
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