ゼロベースから新しいことを始める際にお手軽・便利なものと言えば、スターターキットである。言うまでもないが、やりたいことに必要なモノが一式で同梱されており、すぐさま実行に移ることができる。無論、始める過程で自分の拘りを取り揃えることが醍醐味の一つだという意見もあるが「とりあえずやってみよう」というケースにおいては、うってつけの商品である。さて、ZEHにも同様のコンセプトをもつ商品があることをご存知だろうか。それが“ZEHパッケージ”である。ZEHを実現するために必要な機器を揃えているだけでなく、エネルギー設計の支援や光熱費シミュレーションを用いた提案サポートを付帯している商品もある。まだZEHを手掛けたことがないビルダーにとっては、初めの一歩を踏み出す際に有用な商品と言えるだろう。機器保証や24時間のトラブル対応などのサービスをセットとする企業もあり、もはやスターターキットにとどまらない“ZEHパッケージ”に焦点を当てた。
目標達成ビルダーの最たる理由 “ZEH仕様の商品設定”
ZEHビルダー・プランナーに登録する住宅事業者は、全国で約7,300件にも上る(19年9月末時点)。これらZEHビルダーの供給規模は約21万戸とされ、年間の注文新築戸建着工数28.2万戸に対し、74.5%をカバーできるという(SII資料『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業調査報告会2018』より)。つまり、現在登録するビルダー全社が新築の全てをZEHとすれば、市場規模は20万戸を超えるわけだが、これは極端な話。言うまでもなく、様々なニーズがある中で100%ZEHとすることは、余程の経営方針を貫かない限り、現実的とは言えないだろう。ましてや現状は57.1%のZEHビルダーがまだZEHを手掛けたことがなく、14.1%が実績報告をしていないという状況となっており、ますます難しい。事実、ZEHビルダーの報告ベースでは18年は年間5.3万戸程度とされる。ZEHという方向性には賛同しているものの、予算や顧客の理解が引き出せない、体制不備などの理由から手掛けられていない状況が続いている。
さらなる普及を図るには、言わずもがな、着実にZEH実績を挙げていく必要があるが、どのように打開すれば良いのか。太陽光発電の導入費用を抑えられる第三者保有モデルを利用するなどの方法もあるが、初めてZEHに取組むケースでは、少しばかりハードルが高そうである。そこで成功事例の中から導き出すと浮び上がってくる策が“ZEHパッケージ”の利用である。というのも、ZEHの建築目標を達成しているビルダーの成功要因として最も多い理由が、“ZEH仕様の商品の設定”をしていることにあるからだ。1,035社の回答のうち、699社が目標を達成できた理由に挙げている。ZEHパッケージは、必要な設備が揃っているだけでなく、省エネ計算サポートや保証、故障対応窓口などをセットにしている商品もあり、実績のないビルダーでも手軽に商品化を実現することができるのである。
“簡単利用”のコース式、“少し拘りたい”バイキング式、 オーダーメイドの3種
では、ZEHパッケージとはいかなるものなのか。各社の詳細は上表の通りだが、仕様として大きく3種類ある。
一つ目は、メーカーや製品など予め用意された製品を利用する、言わばコース料理の様なタイプがあり、指定の製品を利用するだけでZEHの要件を満たすことができる。もちろん、ケースに応じて一次エネ削減量の設計は要するが、算定支援やZEH達成の有無を診断するサポートなども付帯しており、初めて取組むビルダーでも利用しやすいものとなっている。ガス併用やオール電化によって、使用する設備は異なってくるが、それぞれの要望に応じたコースをラインナップしている場合もある。エスイーエム・ダイキンや鈴与商事が手掛けている。
二つ目は、同じく料理で例えるなら、バイキング形式のタイプがある。設備や建材毎に複数メーカーを用意し、それぞれ選択、商品仕様を固めていくといったイメージだ。同タイプの商品を展開しているナイスでは、まずビルダー・工務店の住宅商品づくりをサポートするパッケージを提案。初めに断熱や省エネ性能が異なる松竹梅のモデルを選択し、その中で各住宅設備や建材において、種類やメーカーを決めていくことで住宅商品の仕様を定める。さらにZEHやスマートハウス仕様とする場合には、専用プランも利用するという流れとなる。ハイエンドモデルや子育て世帯向けなど、ベースとなる住宅のコンセプトから固めることができることを強みとする。出来上がった住宅商品について、専用のパンフレット作成も行っており、住宅事業者は提案資料まで整えることができる。
三つ目は、特定のメーカーに絞らず、フリーで選ぶオーダーメイド型。同タイプを展開する山善では、ZEHの基本性能に加え、ユーザーニーズの高い付加価値機能を装備したコンセプト住宅を自由設計で対応。工務店が提案時に必要なカタログ、光熱費シミュレーションなどの販促ツールも提供する。さらに導入研修、営業研修などのスキルアップ研修も実施し、ユーザーへの販売環境を整えるサポート体制も敷いている。
これらパッケージは、先述の通り、商品化の面だけでなく、省エネ計算サポートやトラブル対応なども付帯されていることから、既に活用しているビルダーは少なくない。強固なビルダー向けルートを構築しているナイスでは、提案時のシミュレーションツール等も用意し、これまで300社程度が利用、19年1月に行った商品リニューアル後は3ヶ月で100社増加するなど勢いに乗っている。このほか鈴与商事は、納得住宅工房など地元ビルダーとともにパッケージを利用したモデルハウスを建築するなど地域密着で着実に実績を重ねている。今年度より本格的にスタートさせたエスイーエム・ダイキンも三重県のビルダーでショールーム採用されており、今後は更なる提案に注力していくほか、シャッターやIoT対応によるセキュリティ強化など商品自体のブラッシュアップも図っていく構えだ。パッケージ商品によるZEH普及の底上げに期待が掛かる。
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.57に掲載したものより抜粋しています。
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