卒FIT市場に向けた自家消費向上策へのドラフトは何が指名されるのか。無論、前号既報の“バッテリー”は筆頭ではあるが、余った電力を熱に変換し貯めておくという“蓄熱”機能を有するエコキュートやハイブリッド給湯機も有力である。ましてや既存設備の買替需要やエコポイント制度も絡み、一層、業界の関心は高まっているところだ。卒FIT向け連載企画第三弾では、まさしく今、熱闘が繰り広げられようとしている給湯機市場にフォーカスをあてる。
複数トリガーが交差する2019年給湯市場が熱いワケ
エコキュート、エコジョーズといった高効率給湯機は、2000年頃から市場が立ち上がって以降、着々と普及が進められてきた。ものの10年でそれぞれ年間50万台規模の市場にまで成長した。しかしエコキュートについては、東日本大震災後の電力事情を契機に頭打ちとなり、以降は年々下降基調となった。対してエコジョーズは、エコキュートが伸び悩んだ分、採用数が増加。今や100万台を突破している。とは言え、エコキュートも電力会社が再度PRを始めたこと等によって15年から再び上昇基調に転じ、15年度の40万台から18年度は45万台にまで持ち直している。環境に応じた変動はあったものの、緩やかなカーブを描いてきたエコキュート市場。そんな同市場が良い意味で急変する可能性を帯びてきた。19年11月より現れ始める卒FITユーザー向けの蓄熱提案、設置から10年以上経過した同機の交換需要、そして後述の『次世代住宅ポイント』と提案要素が盛り沢山に控えているのである。中でも強力なのは、顕在化し始めたリプレイス市場。実際、三菱電機は既に買換需要が活発化しており、交換が主となる家電量販向けが前年比50%増との好況ぶりだ。同様に量販向けが強い日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立)も同ルート含め今年度は105%程度の着地を見込んでおり、国内商品企画部の岡田隆部長代理は「IHクッキングヒーターはエコキュートより4〜5年早く上市したが、現在は買い替えを含め約70万台の市場となっている。エコキュートも同様のカタチとなれば、市場は一気に拡大するだろう」と期待を寄せている。もちろん量販向けルート以外でも、各社リプレイスによる需要増の確かな手応えを掴んでおり、現在のペースで推移すれば、19年度は前年比7%増の51万台程度と見込まれ、いよいよ50万台市場に返り咲く。またメーカーシェアは、これまで年間出荷12万台規模でパナソニックと三菱電機の首位拮抗状態が続いていたが、今年度はとりわけ量販向けが好調な三菱電機が大きく伸長しており、トップとなりそうだ。三菱電機群馬製作所営業部の林智也営業課長は「事業開始以来、現在が最も稼働率が高い。今夏より生産能力を増強し、今後の規模変動にも柔軟に対応できる準備を進めている」と状況を語る。先の提案要素はガス給湯機側も全く同じ。ただしプレイヤーは、ヒートポンプとエコジョーズを組み合わせたハイブリッドへと変わる。さらにリプレイス需要はエコジョーズのみならず、従来のガス給湯機も同様であり、ターゲットとなる市場はエコキュートとは比較にならないほど大きい。ただ、現在のハイブリッド市場は、年間約1.8万台。リンナイハイブリッド営業室の柴田毅課長は「現状、ハイブリッドは新築向けがメイン。買替に対してはまだまだエコジョーズの採用が多い。このタイミングを機にハイブリッドを周知し、拡販に繋げていきたい」と意気込む。とはいえ、ガス機器販売店筋からの話では、大手ガス会社がハイブリッドの試験販売を始めるとの噂も聞かれ、普及の兆しが見え始めている。
もはや標準化の太陽光連携機能、HEMS式・ボタン式で二分
既に顕在化してきたリプレイスであるが、この時期の目玉となるのは、やはり11月から現れはじめる卒FITユーザー向けの蓄熱提案だろう。これに対応すべく、エコキュートメーカーは一斉に、沸上時間をシフトする太陽光連携モードを搭載し、既に臨戦態勢に移っている。この太陽光連携モードについて少し触れておくと、エコキュートは通常、安価な深夜電力が適用される時間帯にお湯を沸かし始め、翌朝に沸き上げるという運転方法を採る。対して同モードでは、沸上時間の一部を日中にシフトし、太陽光発電の電力でお湯を作る。卒FIT太陽光の電力は、一般的に売るよりも使う方がお得となるため、自家消費率を高めることで、経済的に給湯を行うことができる。現在、同モードへの切り替え方法は二分化しており、翌日の天気予報や発電量を予測した上で、自動で切替えるHEMS式、ユーザーが自ら給湯リモコンを操作して切り替えるボタン式に分かれる。パナソニック、コロナ、日立は両対応、三菱電機、ダイキン工業、デンソーはHEMS式、東芝キヤリアはボタン式となっている。HEMS式は自動で切り替えてくれる点で、利用者の作業負担を軽減できるが、メーカー指定のHEMSが必要。ボタン式は手動となるが、機器本体で操作できるため既設のホームネットワークに縛られず導入できる点が強みとなるなど、それぞれ一長一短ある。各社蓄熱提案の準備は万端であるが、特に同要素に力を入れているのは、パナソニックライフソリューションズ社だ。同社はボタン式、HEMS式の両方に対応するだけでなく、蓄電池と連携することで予測ハズレのリスク軽減を図る機能も搭載している。システムソリューションの展開を強めている同社は「天気の急変などで発電量を確保できなくなった場合、日中の高い料金で沸き上げることになる。当社の『AIソーラーチャージ』では、その様なケースでも蓄電池の電力でカバーできる機能を用意している」(商品企画課 美馬秀夫課長)と自信を覗かせる。さらに7月にはNTTスマイルエナジーと協業し、機器導入とセットにした卒FIT向け買取プランを用意。蓄電池やエコキュートなど自家消費率向上に資する機器を導入することで最大16円/kWh(東日本エリア)と業界最高値の買取価格を提供している。エコキュートを導入した場合でも東日本で10.5円/kWh、西日本で9.5円/kWhと、8円前後が水準となる中、高額なプランを用意した。このほか、コラムで詳報する『SUN給プラン』との相性も良いことから、同サービスも活用して拡販を図る。HEMS・ボタン式の両対応、サービス面も拡充と幅広い対応力を備えた。同様に京セラ製のHEMSとの連携機能とボタン式を搭載するコロナの営業本部住設営業部 山田敬次長は「既に一部ビルダーさんより、蓄熱の有効性について理解頂き、引き合いがきている。10年前の太陽光ユーザーはHEMSまで導入しているケースは少なく、手動タイプの機能が奏功している」とし「同じ太陽光連携モードでも、2日間継続と1週間継続のパターンを用意した。週間天気予報を見て週初めに設定する、あるいは日毎の予報で2日間毎に判断すると、操作の煩わしさ・利便性を両立する機能とした」と差別化要素を語る。また、HEMS式のみであるが、ダイキン工業の動向にも視線が集まる。というのも、同社はシャープ製HEMSとの接続確認がとれており、組み合わせ提案が可能となるからだ。初年度は53万件もの太陽光ユーザーがFITを卒業するが、このうち半数以上はシャープのOB客とされている。事業戦略室の三次俊介企画担当部長は「リプレイス市場が活発化する中でチャンスと捉えている。現在、高圧タイプや沸上時間短縮機能など従前のエコキュートより進化した点を訴求しているが、卒FITへの有効策としても如何に周知していくかがポイント。これらを武器に積極的に拡販を図っていきたい」と意気込む。制御方法には細かな違いはあれど、結果的に殆どのメーカーが太陽光連携機能を搭載した。もはや標準機能化し、蓄熱という考え方自体では、大きな差別化は図れないものとなっている。三菱電機群馬製作所の林課長は「現在の太陽光連携機能をより良い機能へ強化していくつもりだ。さらに差別化提案としては、主に主婦層をターゲットにバブルお掃除といった家事ラク機能などの付加価値は依然響いており、今後も継続的に提案していく」と語る。同様に東芝キヤリアも除菌・防臭効果が見込める『銀イオンの湯』を全面的に押し出すほか、デンソーも『外でも給湯』など暮らしに即した機能で差別化を図っている。他方、10月より太陽光連携機能搭載の製品をラインナップする日立は強力な差別化要素で独自路線を突き進む。新製品のメインは、井戸水や硬度の高い水質地域に設置できる高硬度水対応型モデル。硬水地域では配管にスケール等が溜まり、不具合を起こす可能性があることから、同地域で設置する際はメーカーへの水質検査が必要となる。対して対応モデルでは、簡易検査キットで設置可否を判断でき、販売店はスムーズに提案できる。対応モデルについては長府製作所も用意しているが、太陽光連携に関して同社は現在、準備中。卒FIT向けだけを捉えるならば、硬水地では日立の独壇場とも言える。新製品ではさらに本体1年・冷媒回路3年であった無償保証期間もタンクと同じ5年間に延長したほか、新たに節約機能なども搭載した。岡田部長代理は「井戸水地域や100mg/L以上の硬水地域は約310万世帯ある。電化による経済メリットや長期保証を武器に開拓していく。まずは硬水地でも経年劣化による効率低下が少ないことを販売店にしっかり共有する」と戦略を語る。市場開幕を控え、それぞれ体制を整えているが、懸念点もある。それは、卒FITユーザーは旧オール電化プランを利用しているケースが多いことだ。旧プランの深夜料金は現在よりもさらに安価であるが、対する卒FIT向け買取プランの中には、高額なものも存在しており「太陽光連携モードの経済性を訴求できないケースもあるだろう」との意見もあった。
負けず劣らずのハイブリッド利用しやすい太陽光連携
一方、ハイブリッド側も卒FIT市場に対する準備は万端だ。こちらの太陽光連携モードにも少し触れておくと、同機の場合、通常は夕方の給湯需要に合わせその直前にヒートポンプで沸き上げるところ、日中に前倒しすることで蓄熱に回すという運用になる。天候や発電状況を見て切り替えられるため、エコキュートの様に予測を必要としないのが強みである。HEMSによる自動切り替えはないが、モードを固定することが可能。仮に発電しない状況となっても、そもそも同機ユーザーは時間帯別料金プランであるケースが少ないため、昼間の電力が高いということもない。つまり、リスクなく気軽に同モードを利用することができる。もちろんIoT要素も搭載しており、ノーリツ、リンナイともに専用アプリを介してモバイル端末でモード切替を行うことも可能だ。またハイブリッドにおいては、新規の太陽光発電導入者に対しても蓄熱提案が有効的。19年度の売電価格は24円/kWh(東京・中部・関西電力エリア。出力制御導入義務が無い地域)であり、電力各社の従量電灯プランは第2段階料金から24円/kWhを超えるため、自家消費した方がお得となる。リンナイの柴田課長は「太陽光連携への関心度は高い。特にサブユーザーは次年度の売電価格がいくらになるか気にしている。自家消費を促進させる流れは間違いないが、今後の売電価格によっては、より強力な普及トリガーになり得る」と分析する。同社は通常運転時よりも高い温度で沸上げることで、蓄熱量を増やす独自の太陽光連携モード等で差別化を図っている。一方、ノーリツは「全国的にセミナーを実施して、ガス事業者や機器販売店、地域ビルダーに対し、蓄熱提案含めた自社製品の訴求ポイントについて周知を行っている」(温水事業企画室商品2グループ 市原拓リーダー)と、それぞれ蓄熱提案に力を入れている。
読めぬ消費増税の需要変動エコポイント制度で払拭
もう一つ、競争を加速させる要素が『次世代住宅ポイント』、いわゆる“エコポイント”である。同施策はもともと消費増税による需要変動の平準化を図るものであるが、こういった経過措置は、駆け込みの反動減を補うカタチで需要の底上げに利用されるというのが、大方の見方である。しかしどうも今回は違うらしい。世の中的には軽減税率やキャッシュレス決済によるポイント還元等により目立った駆け込みは発生していない様で、同じく給湯機に関しても、各社の駆け込み需要の体感はまちまちであった。つまり、平常の需要推移から10月以降はさらにポイント制度を利用できるという見方もできるわけだ。今回のポイント制度は、前回のように“対象工事を3箇所以上とすること”というような条件がなく、単体でも申請が可能。高効率給湯機は2.4万ポイント取得できる。ポイント利用については、商品券等との交換はなくなり、家電やインテリア、食料品など登録された商品との交換となるが、無論、それでも利用しない手はなく、多くのメーカーが自社HPに専用サイトを立ち上げ、制度概要や自社対象製品を紹介している。ノーリツの市原リーダーは「例えば当社のシステムバスを導入した際、システムバスに備わる節湯水栓や段差解消のバリアフリー対策、断熱窓・浴槽や手すりも対象となり、一気に10万ポイントを獲得できる。高効率給湯機やシステムキッチン等と合わせてトータル的に提案していく」と戦略を語る。11月に発売を控える新型給湯リモコンでは、利便・快適性やヒートショック対策となるIoT機能を拡充するなど攻勢をかける。またダイキン工業の三次部長は「東京都では、同様に『家庭のゼロエミッション行動推進事業』というポイント制度を実施しており、合わせて活用していく。利用できる補助事業はしっかり販売店に周知していく」と語り、続けて「ヒートポンプのみの更新というのも一つの引き出しとして差別化を図っていく」と方向性を示す。エコキュートでは、お湯を貯めておく貯湯ユニットよりも、熱交換を繰り返すヒートポンプの方が断然、消耗が激しい。「ヒートポンプのみ故障するケースは少なくない。交換費用を抑えたいというニーズに対応する」とした。もちろん、他メーカーも既に販売戦略を行動に移しており、パナソニックでは、昔と今のエコキュートの機能的な違いや経済メリットの差を一冊にまとめた販売店向けの提案用パンフレットを用意し、提案力向上を図っている」(美馬課長)とするほか、三菱電機群馬製作所の林課長は「現地で営業する販売員への研修会を開催し、販売力強化に注力している。売り手の方には、工場ラインの見学や実際に入浴してもらい、体験談としてリアルな声を届けてもらっている」と取組を語る。さらに東芝キヤリア国内事業本部広域設備営業部ホームソリューション担当の織田秀三グループ長は「当社だけに限らないが、関西地区では他熱源からエコキュートへの交換に対し、3万円をキャッシュバックするキャンペーンを実施する」と熱源転換にも積極的だ。対して、リンナイの柴田課長は「壊れる前の交換を促していきたい。ただこの場合、エコジョーズからエコジョーズへの提案は、優位性を提示しづらく難しい。ハイブリッドの経済性、緊急時の非常用水としての利用やガス・電気どちらかのインフラが正常であれば運転できるといった特有のレジリエンス力をPRしていく」とし、熱源転換の阻止にも力を入れる。リプレイスの顕在化、ポイント制度の実施と急激に熱くなり始めた給湯機市場。蓄熱提案の引き合いについては、全社「本格的な需要はこれから」と口を揃えるも、ここに卒FIT商戦も絡めば、一層、市場はヒートアップすることだろう。
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.56に掲載したものより抜粋しています。
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