2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会(通称:HEAT20、委員長:坂本雄三東京大学名誉教授)は6月27日、品川区民ホールで『HEAT20からのメッセージ2019報告会』を開催。住宅関連事業者を中心に約280名が参加した。同報告会では戸建住宅における断熱性能を更に高めた新水準の提案と、既存水準をクリアした戸建住宅の実態調査を発表した。
新外皮性能水準、温暖地域で寒冷地並の断熱設計
初めに坂本委員長が「2016年に公表したHEAT20 G2グレードは日本住宅の断熱向上に貢献していると自負している。今回発表する新グレードを完遂し、今後は窓の熱貫流率だけでなく日射取得率の基準策定や非住宅を含む建築外皮の設計基準への発展を目指す」と活動概要と方針を報告した。今回のメインテーマとなったのはZEHシリーズやLCCM住宅の断熱性能の目安として浸透しているG1、G2の上位版として発表された「G3」であった。設計WG主査で北海道立総合研究機構の鈴木大隆理事は「G3の設定は2011年より検討していた。国内の断熱水準を更に引き上げるきっかけになれば」と意義を解説した。新しく用意する最高水準のG3グレードでは表の通り外皮熱貫流率を表すUA値[W/(㎡・K)]が1~3地域で0.20、4~5地域で0.23、6~7地域で0.26と定められた。これは冬期間の体感温度を概ね16℃を下回らない基準となり、G1グレードから3℃程度断熱性を高める。またG2グレードクリア時の1~3地域で定められるUA値は0.28であるが、G3グレード時は温暖地域でも現在の寒冷地より高度な断熱設計を求めることになる。さらに同水準を適用するとH28年基準相当からの省エネルギー性能を居室連続暖房時に約50%、部分間欠暖房時に約75%削減できる。
併せて以前より議論されていた鉄筋コンクリート製(RC造)共同住宅の外皮性能基準「C2」「C3」も新登場した。設計WG委員で砂川建築環境研究所の砂川雅彦社長は「3~5、7地域の水準はまだ設定できていないが、早々に案を提示していく」とし詳細を解説した。全戸入居を前提に住戸単位で提案するものとし、C2は概ね16℃を下回らない場所に、C3はC2より0.5~2℃程度上の19℃を下回らないよう設定した。続けて、昨年度にも話題となっていた指標としてのUA値の問題点について「外皮性能の総合指標としてのUA値の他に、壁と窓に分けた推奨水準を示すべき。断熱性を高めて日射取得量を減らした場合は午後4時頃から照明を点けなければならないことまで考慮した目標水準、最適設計が必要」(鈴木主査)と例を挙げながら窓も含めたガイドブックの作成意思を表明した。検証WGの主査で近畿大学建築学部の岩前篤教授が「HEAT20住宅の検証」と題し、実態把握調査の結果を発表した。同調査はHEAT20賛助会員の建設住宅でG1が9件、G2が33件、その他4件の計46件を対象に行った。窓開口部面積、暖房の使い方と室内温度のデータなどの特徴を捉えた上で過ごし方、着衣や寝具の変化など訪問ヒアリングによる暮らしの変化を明らかにした。住宅の特徴として、外皮面積合計に対する窓開口部の面積比率は過半数が8%未満となった。一方、パッシブハウス仕様により、比率32%以上で南側に大きく窓を取っている住宅もあることから「断熱性能を高めると必ずしも開口部比率が低くなるわけではなくコストとの兼ね合いになる」(岩前主査)ことも主張した。また暖房設備についても解説。「使用設備はエアコンが多くG1よりG2の方が連続暖房方式の割合が多い。居室空間において寒さを感じることは皆無で、健康状態を見ても91%が改善したといい、悪化したとの声は挙がらなかった」とし「肩こり、偏頭痛、喘息の症状がなくなった」「薄着になった」「寝付きが良くなり朝起きやすくなった」「家が暖かくなりストレスが減った」など住まい手のコメントを発表した。
最後に住宅技術評論家の南雄三氏、北信商建の木村大樹部長、アーキキャラバン建築設計事務所の神田雅子一級建築士、リビタの黒田大志氏と鈴木主査、岩前主査、砂川委員が登壇しパネルディスカッションを行った。鈴木主査は「G3の必要性や意義についてよりブラッシュアップしていく」と次回までの課題をまとめた。加えて、 G1・G2グレード水準の高断熱住宅に数多く取り組んだ住宅事業者に対する表彰式が行われ、ヤマト住建、北信商建、リベスト、アイ・ホーム、エコワークス、すまいのウチイケ、大畑建設、島野工務店、近藤建設興業、鈴木環境建設、敬工務店の11社を表彰し、3時間半におよぶ報告会を終了した。
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.54に掲載したものより抜粋しています。
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