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2019年、自家消費社会の旅:住宅用太陽光は電気と熱でため得!

最善策は自家消費、蓄電・蓄熱で太陽光余剰発電を使い尽くせ

 2019年、自家消費社会の旅 住宅用太陽光発電が2019年、業界史上最大の転換期を迎える。余った電気を高く買い取る10年の固定価格買取期間が終了し、大量の売電難民が発生する、いわゆる『2019年問題』が目前に迫っているのだ。 ただ〝問題〟と言えども、業界にとっては決してネガティブなものではない。むしろ、新しいビジネスチャンスをつかむキッカケとなり、一部では前倒しで商戦が繰り広げられている。残すところ約1年。再エネ事業に携わる者ならば、この波に乗らない手はないだろう。 そこで、過去数回にわたり詳報してきた事象ではあるが、今回改めて同問題に切り込むとともに、最善策となる「自家消費」についてまとめてみた。

卒FITユーザー発生数「56万件」

 2009年、国は住宅用太陽光パネルで発電した電力の余剰分を10年間に亘り買い取る『余剰電力買取制度(現・固定価格買取制度、FIT)』を開始した。1kWh当たり48円の高額な値段で電力会社が買い取ることを義務付けたのだ。さらに同制度下では、08年以前に太陽光発電を導入したユーザーもすべて対象として含め、10年間売電できる権限を与えた。そんな太陽光ユーザーたちが2019年に一斉に期限切れを迎える。『2019年問題』である。対象者は、自ら生み出した太陽光発電の電気をどうしたら最大利用できるか等を考える必要に迫られるのだ。その発生数は、約56万件(太陽光発電協会統計)に上ると言われ、住宅用太陽光発電の累計設置件数は230万件以上あるというから、全体のおよそ25%もの割合を占めることになる。加えて、56万件の内訳については、地域別では北海道・東北を除き均等に分布し、県別では愛知県、埼玉県、福岡県の順でそれぞれ3万件程度が導入しているとみられる。太陽光パネルメーカー別でみると、シャープが半数を有し、京セラ、パナソニックが次ぐ状況。無論、09年以降も継続的に20~40万件もの家庭がFIT期間を終え、24年には計190万件に達する。容量にして約8GW弱の市場が今後形成されていくわけだ。『2019年問題』は、大きな流れの始まりなのである。ただ、卒FIT市場が立ち上がること自体は当初から分かっていたこと。深刻なのは、FIT終了後の売電価格が下がり、経済メリットが低下してしまうことである。尚且つ、11年目以降の売電価格が未だ不透明であること。それが〝問題〟なのだ。太陽光発電協会の増川武昭事務局長は「既存電力会社の卒FIT価格が明示されないことには、業界全体が明確な根拠を持って活動できない。すべて想定となる。インパクトを持って展開していくためにも、早急な価格提示を願いたい」とする。とりわけ、08年以前の設置者については、売電を目的として購入せず、主に環境貢献等のために導入した経緯もあり、経済性を優先しない方々かもしれない。とはいえ、卒FITを迎えれば、これまでよりも収支が悪化することは明白であり、09年以降の高額な売電を目的に設置してきたユーザーにとっては尚更な問題である。では、経済メリットを少しでも高めるにはどうしたらよいか。そこで注目されているのが、蓄電システムや電気自動車、V2Hシステムを活用した蓄電、ヒートポンプ式給湯機による蓄熱で、自家消費率を拡大することである。本誌試算では、卒FIT電源の売電価格を10円/kW(後述で説明)と想定した場合、FIT期間中と比べ経済メリットは約1/3にまで減少するという結果となった。これに対し、先述の機器を用い、自家消費率を上げることで、以降10年間で最大約50万円の差が出る。これら機器を用いた自家消費向上策は次項より詳報していくが、何も策を講じない場合はどうなるのか。

FIT終了後は相対契約売電先を見つける必要あり

 先述の通り、FIT制度は、電力会社に再エネで発電した電力の買取を義務付けたものであるが、売電期間が終了した再エネ電源は、FIT制度下の電源ではなくなるため、買取義務は無くなる。この卒FIT電源の処遇について、昨年12月に開催された再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(委員長:山地憲治地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)では、左図の通りユーザーと電力会社の相対・自由契約とし市場価格での取引を基本とする方向とした。つまり卒FITユーザー(電気の売り手)が売電を続けるには、買い手を見つけ出し、相互に納得した価格で契約を結ばなければならないのである。またユーザーが任意で売り先を選べるということは、選定に時間を要するケースや売電先企業が倒産する可能性もある。そうなると一時的に「売り先がない」という事態に陥るわけだが、同委員会では、この様な行き場のない電力が発生した場合、系統網を監理する送配電事業者に引受を要請することを想定。系統網の周波数調整の負担が増す可能性があること等を鑑みて、『無償』での引受とすることを検討している。決定事項ではないが、売り先が不在の場合には、余剰電力はタダとなる可能性があることは留意しておく必要がある。

スマートテックが切り込み、卒FIT太陽光、10円/kWhで買取

 売り先の選定などは発電した電力を余すことなく使い切ることさえできれば問題ないわけだが、必ずしも毎日、全ての電力を自家消費できるとは限らない。売電先を決めておかなければ、タダで系統に流すことになる可能性もあるため、売り先は見つけておきたいところである。ただ現状では、買い手側が卒FIT電源の買電金額をいくらとすべきか検討している段階にあり、「○円/kWhで買います」と名乗りを挙げていない、あるいは名乗れないという状況である。単純にプランが固まっていないことはもちろんあるが、現時点で金額や買取サービスの内容を提示すると、他の買い手は「もっと高い買取金額を提示するのでは」と牽制し合い、言わばオークションに近い状況となっているのである。そんな中、太陽光や蓄電池の有力販売店であり、電力事業等も手掛けるスマートテック(小寺雄三社長)が6月26日、先陣を切って太陽光の卒FITユーザー向けに買取サービスを打ち上げた。買取価格は、通常価格8円/kWh、6月末から3ヶ月限定で実施するキャンペーン価格では10円/kWhとした。他方、東京電力エナジーパートナー(川崎敏寛社長)では、FIT対象外となる再エネの発電電力に対し、10・86円/kWhという買取金額を提示している。ただ広報部は「この単価は、極稀にあるFITを利用しないお客様などに対し用意しているもの。卒FIT向けのものではない」としており、同向けの買取価格については「国の方針や非化石価値市場など必要な要素が明確に見え始めてからになるとみられる。当社では電気のお預かりサービス等を実証しているところであり、こういったサービスも踏まえた上で検討していく」とする。とは言え、同社が提示するこの金額は、原油や液化天然ガスなど各燃料費の調整単価を加味した根拠に基づいた数字。先のスマートテックの金額も踏まえ、今後卒FITの買取金額は10円/kWh前後をベースに検討されていくものと予想される。このほか、太陽光の第三者保有モデル、PPAサービスを手掛けるシェアリングエネルギー(古賀恵美子社長)が「現在、パートナー企業と内容を精査しているところ。秋頃には発表予定としている。蓄電池等の機器も活用したサービスを考えている」(井口和宏事業開発室長)と参画を匂わせており、いよいよ卒FIT電源の電力売買に動きが見え始めた。とは言え、繰り返しとなるが発電した電力を隈なく使い切ることさえできれば、何ら問題ではない。経済メリット的にみても売電価格が買電価格(24円/kWh程度)を超えない限り、自家消費した方が得である。さらに再エネ賦課金など電気代の上昇を踏まえると、尚更太陽光の電力を有効的に活用し、できる限り買電を減らした方が良い。次頁からはそんな同問題の最善策である自家消費向上の術を詳解していく。

自家消費率拡大の急先鋒、17年度4万2000台突破
卒FIT市場開幕に向け、鋭意充電中!


 自家消費へのシフトが最もおトクになることを前頁でまとめたが、その自家消費の割合を手っ取り早く増やす方法が、家庭用蓄電システムである。太陽光発電の余った電気を蓄電池に充電しておき、夜間等に放電することで、自家消費率を拡大させるのだ。再エネ賦課金の上昇などで高騰する電力会社からの買電を減らすことにも繋がって、想定される卒FIT価格で売電するよりも高い経済メリットを得られる。故に、FIT終了後の選択肢の中で、最も合理的な解決策として注目されており、経済産業省もFIT終了後の基本的な考え方として「蓄電池と組み合わせるなどして自家消費すること」を推奨している。こうした背景から、前倒しで2019年問題対象者向けを含めた自家消費の提案が進んだこともあって、17年度の蓄電システム市場は、前年比31%増の4万2000台に伸長した。11年の東日本大震災を機に、非常用電源の確保等の機運が高まったことで立ち上がった同市場であるが、当初に比べて約4.2倍まで成長した。ブランドベースでみると、卒FITユーザーを約30万件かかえ早期提案を仕掛けているシャープが首位。パワコンベースでは、OEM戦略で提携先を徐々に伸ばしたオムロン、リチウムイオン電池ベースでは、性能やコスパが高いことで定評のあるLG化学が各蓄電システムメーカーから多数の採用を受け、それぞれシェアトップとなった。18年度は、約1年後の本戦に向けた自家消費提案が更にヒートアップすることが予想され、各社とも前年増を計画。計5万5000台以上を見込んでいる。国内リチウムイオン電池メーカーの積水化学工業や東芝インフラシステムズ、エリーパワーなどは、19年以降の需要を見据え生産能力増強を表明し、供給体制を整えているところだ。各社の主要製品については左表で示すとおりで、19年に向けたラインナップ拡充や機能強化が進んでいる。家族構成や、経済性重視、環境重視、停電時重視など利用者のニーズに合わせて提案していきたい。しかしながら、注意しなければならないのは、初期投資回収という観点を加えた場合、現時点では決して経済的とは言えないこと。経産省では蓄電システムが1kWhあたり9万円であれば、およそ寿命となる15年でペイできると試算している。現状、末端価格1kWhあたり20万円前後であることを考慮すると回収は難しい。単純に1kWhあたり11万円前後の持ち出しが必要となる。太陽光発電が投資商材として脚光を浴びただけに、どうしても関連商材の蓄電池にも投資的な期待が寄せられるわけだが、現時点ではあくまで本質的なメリットは非常時の安心である。卒FITユーザーには「第一に日々の安心安全を確保しながら、その上で、太陽光発電の余剰電力を売るのは勿体ないので、蓄電システムを賢く利用して電気代を削減しませんか」といった程度の訴求に留めるのが賢明かもしれない。

短い晴れ間でも素早く一気に充電

 ここからは、19年をビジネスチャンスと捉え今後蓄電システム販売に注力しようと考える事業者のためにも、現在の製品トレンドを本誌独自の視点でまとめてみた。まずは急速充電機能。いくら太陽光発電の余剰電力を蓄えることができても、充電する口が小さければ最大限に活用することが難しく、思うように自家消費率を高めることができないケースがある。そのため、急な天候変化があった場合などの少ない発電でも逃がさず素早くたっぷり充電できる機能が求められている。もちろん、小容量であれば、充電する口が小さくても比較的早く満充電できる。大容量でありながら、いかに急速充電できるかが差別化のポイントになってくるのだ。すでに中~大容量かつ急速充電できることをアピールしている製品は複数あるが、昨今では、とりわけシャープやオムロンが同機能に着目し強化してきている。いずれも充放電電力4kWまで拡大し、シャープは8.4kWhで約2.5時間、オムロンは9.8kWhで約2.2時間で満充電できるとする。業界最大級は5.9kWの充放電電力を持つニチコンで、12kWhを約3時間でフル充電してしまうものもある。このように電気を短時間で充電したり、また一気に放電できるものは、卒FIT向けで重宝されるだけでなく、将来的に本格化するVPP(バーチャル・パワー・プラント)などの分散電源システムでも活躍が期待されている。

10kWh以上の大容量タイプが理想⁉

 自家消費率を高めるためには、蓄電池が大容量であることも重要になる。一般的に2009年以前の太陽光平均搭載容量は約4kWとされ、太陽光の1日あたりの平均日照時間は3時間と言われている。つまり、単純試算となるが、1日平均で約12kWhの電力を生み出すことになる(年間約1100時間で算出)。太陽光発電協会の統計によると、売電と自家消費の比率は概ね7対3。仮に、売電していた分すべてを蓄電に回すことができるとすれば、理論上、8.4kWh以上の蓄電容量を用意する必要がある。非常用電源としての安心価値も残しておくならば、10kWh台以上が妥当と言えよう(右頁下図)。さらに、この大容量を活かし、停電時に家中の電化製品等をバックアップできる機能を付加し、独自性を持たせているものもある。ユーザーの中には「停電時に〝家中すべて〟の照明もコンセントも使えるから安心」と捉えている人が案外多い。一般的には、停電した時のことを想定して電気を供給するエリアを選択する特定負荷タイプが主流となっている。すなわち、全てまかなうことができない。一方で、全負荷タイプと呼ばれるものは、家全体をカバーできるため、エリアを選択する必要がない。もしもの備えとしては、全負荷タイプの方が安心感は高いというわけだ。フォーアールエナジーや伊藤忠商事が先行して同機能を特長としていたが、このほどニチコンも一部で対応したところだ。3製品とも停電時でも高出力のため、エアコンやIH調理器、エコキュートなどの200V機器も普段通り使える特長も兼ね備えている。ユーザーの非常時の備えに対する考え方次第となるが、トレンドの一つとして押さえておきたい。

蓄電レディ型パワコンでいつでも自家消費移行可能

 当然ながら、56万件すべてが蓄電システム導入を選択するとは限らない。卒FIT価格で売電を続けるユーザーも一定数存在するだろう。そんなユーザーには、蓄電池ユニット等を後付けできる蓄電レディ型パワコンの提案がある。周知のとおり、太陽光発電用パワコンは稼働およそ10年で更新時期を迎え、FIT終了と時期がちょうど重なる。卒FIT価格で売電を続けたいユーザーも、パワコンが止まってしまえば言わずもがな売電は行えず経済損失に繋がる。新しいパワコンに交換するに越したことはないのだ。そこにレディ型を導入しておけば、電気料金の高騰などの外部要因や居住環境、家族構成の変化に合わせて、いつでも自家消費にシフトできる状況を作り出せる。自家消費移行予備ユーザーを囲い込めるわけだ。機器としては、充放電コンバータと蓄電池ユニットを後付けするだけで対応できる。あらゆる製品が上市されているが、卒FITの世帯の数だけ、使い方も様々である。各ニーズに合った製品を如何に選定して提案できるかが普及の鍵を握ることだろう。

卒FIT対策の大本命⁉自家消費率最大84%、走る蓄電池が魅せる底力

 卒FITユーザーの自家消費率を向上させるにあたって、蓄電システムよりも更に容量の大きい電気自動車(EV)の車載蓄電池を利用することもまた有効である。前頁で1日の平均発電量を約12kWhと示したが、三菱電機京都製作所スマートエネルギー製造部技術第2グループの園江洋マネージャーは「季節によっては20kWh以上発電するケースもある。エアコン等を必要としない春・秋は宅内の電気消費量自体が減るほか、省エネ性能が高い照明や家電等への買い替えが進んでいれば、現時点での自家消費率は3割と言わず、もっと低くなることが予想される」とする。となれば、現行品(連結含まない)で最大12kWhまでしかない蓄電システムでは、とても蓄えきれない。そこで注目されているのがEVの大容量蓄電池。日産リーフなら24~40kWhの電気をためることができる。極端な話、FIT卒業生にガソリン車からEVに乗り換えてもらえば『2019年問題』は幾分解決できるわけだ。EV普及拡大にもつながる。そもそもEVは移動体であるため、投資回収という考え方もない。その上、スマートエネルギー営業課の畑欣仁担当課長によると「ガソリン代と比較すると、経済メリットは非常に大きく、余剰電力を活用すればメリットは一層拡がる(右下図)」と説明する。これだけでも十分おトクなのだが、さらにEVから家庭に給電できるV2Hシステムを利用することで、日々の電気代削減や非常用電源としての価値を生み出すことが可能となる。V2Hシステムについて、スマートエネルギー製造部技術第1グループの田嶌大介専任は「利用者からは、生活がガラリと変わった、節電する楽しみが増えたなどの声があり、満足度は高い」と話す。イニシャルコストは60~150万円程度で高額商材となるが、先述のクルマの燃(電)費のメリットを加えると費用回収も現実的なものになるとみられている。普及はまだまだこれからであるが、ニチコン、三菱電機に加え、このほど急速充電器トップメーカーの東光高岳が名乗りを上げ、V2Hシステムの明確な導入意義を示すデータも、ようやく揃ってきたところだ。

EV走行での車載蓄電池利用はたった2割、V2Hでフル活用可能に

 有益なデータの中でも、積水化学工業が建設した三菱電機製V2H搭載住宅64件に行った調査では、EVの走行による電力利用量は少なく、およそ2割の容量しか使っていないことが明らかとなっている。同社住宅カンパニー広報・渉外部技術渉外グループの塩将一グループ長は「移動体としての利用だけでは、毎日EVの蓄電池が過剰に余っている状態だと分かった。勿体ない。だからこそ、V2HシステムでEVから宅内に給電させ、走行だけでは使い切れなかった電力を有効利用する必要がある。それでも余ってしまう蓄電残量については、非常時・停電時のバックアップ電源(安心価値)として置き換えることで、結果的にEVの蓄電池を100%活用できる」と説明した。同データは、昼間は売電し、夜間電力をEV充電して朝晩に自宅放電する運転モードの『経済モード』における調査結果だが、これをもとに、FIT終了後に想定される余剰電力をEV充電する『グリーンモード』の運転でも試算している。結果は次頁のとおりで、ほぼ『経済モード』同様の電力利用状況となっている。どれくらい自家消費率を向上できたかについては、平均では20% アップの48%まで高められ、EV走行が無ければ34%アップの62%まで高めることができ、トップランナー値ならば、最大84%まで高められるとの試算になった。一例ではあるものの「単なるEV導入だけでなく、V2Hとのセット導入が有効であることが確認されたのではないか」(園江マネージャー)としており、今後のV2H提案加速に期待を寄せていた。

充電機会ロスを定置用蓄電池導入でカバー

 ただ、『経済モード』の時と大きく異なるのは、太陽光発電による充電に頼るため、悪天候やEV不在時には充電できないことである。「年間平均でEV容量全体の15~35%に相当する充電機会のロスが発生する。EVの蓄電容量が大きくなるほど、充電機会損失の割合も比例して大きくなる」(塩グループ長)と試算している。今後EVは最大航続距離を伸ばすための蓄電池大容量化が益々進むものと想定されるため、充電機会損失を最小化させる取り組みは必至である。解決策は一つ。定置用蓄電池を別途用意すること。そこで同社では、卒FITまでを見据えて新築供給時には、ニチコン製の太陽光発電、蓄電池、EVが連携するトライブリッド蓄電システムを活用していく方針を示した。無論、新築だけでなく『2019年問題』対象者へも同システムを提案することができる。ニチコン電源センター蓄電システム企画部の山本隆禎部長は「トライブリッド蓄電システムの良いところは、卒FITユーザーのEV購入欲に合わせて提供できること。例えば、今すぐEVに乗り換えたい方には、V2H含めた3点セット。様子見の方には、4kWhまたは8kWhのハイブリッド蓄電システムとして自家消費を提案しておき、EV購入のタイミングでV2Hを後付け提供する」と、システムアップデートができる強みを語った。充電機会ロスと蓄電池イニシャルコストのバランスをユーザーがどう判断していくかに委ねられるが、完璧な自家消費を目指すならば、太陽電池、蓄電池、EVの3電池連携は必須なのかもしれない。

やりくり上手なあなたは必見
一家に1台必要な給湯機でできる!余剰電力の蓄熱


 自家消費対策として、ここまで蓄電池、V2Hと余剰電力を電気のまま保存できるデバイスを紹介してきた。無論、この方法が最もわかりやすい形ではあるが、電気エネルギーを有効的に溜めておける方法はもう一つある。ヒートポンプ式給湯機を活用した熱エネルギーへの転換、つまり蓄熱である。ヒートポンプ式は大気熱を利用することからエネルギー効率は高いものの、熱交換を繰り返し徐々に温めていくため瞬発力がない。故に貯湯タンクを用い、給湯需要のない時間帯に予め沸き上げ、保温しておくという方法を採っている。水からの即湯性という観点からはネックとなる要素だが、蓄エネが重要となる19年では、この特性が逆に活きるわけだ。給湯機は一家に1台必要な機器であり、新たな〝設備への投資〟という概念はない。本編ではそんなヒートポンプを活用した自家消費率UP策をフォーカスする。

『晴れ』の昼間に沸き上げシフトHEMSが自動制御

 ヒートポンプを用いて給湯する製品は2種類ある。ヒートポンプのみでお湯を沸かすエコキュート、エコジョーズを組み合わせ即湯性も加えたハイブリッドである。運転方法の違いからそれぞれシフトする時間帯が異なる(次頁参照)が、各機の太陽光連携モードは、通常モードで運転する時間帯の一部または全部を太陽光が発電する時間帯にシフト、余剰電力を熱に変換して貯めておく点で変わりはない。東京大学等の研究チームの検証結果では、370L~460Lのエコキュートで2~4kWhの蓄電池と同等の自家消費率向上が見込めるというデータもあり、19年問題への対策として有望視されている(本誌№30詳報)。加えて、同モードを活用することで光熱費は年間5000円程度軽減できるとされ、ただでさえランニングコストに定評のあるエコキュートに新たな武器が備わる。まずはそんな蓄熱の注目株から説明する。沸き上げ時間を翌日の昼間にシフトするため、天気や発電量の予測が必要なエコキュートでは、現在、ユーザーが自らモードを切り替える、HEMSが自動で制御するという2つの機能が搭載されている。自動制御では、郵便番号等からエリアを特定し気象庁やウェザーニューズ社の天気予報データを取得。『晴れ』であれば、過去7日間の日射量、発電量等を考慮して沸き上げをシフトする。HEMSによる制御機能はコロナ、パナソニック、デンソーが対応製品を展開しているが、新たに三菱電機も7月末から対応製品を順次発売する予定である。トップメーカー陣の突き放し、またデンソーもシェア獲得に向け展開を強めている。パナソニックエコソリューションズ社電化商品部の種子田和宏部長は「ZEHや太陽光発電搭載住宅を手掛ける住宅事業者さんからのニーズが多い。また太陽光販売店さんの多くはオール電化を手掛けており、新たな提案手法として、既に同機能を押し出した営業が始まっている」と順調な滑り出しの様だ。6月には「多方面から要望の声を頂き、寒冷地仕様の製品にも同機能を追加した」とするなど勢いに乗る。デンソー住設・F&O営業室営業1課の伊神公博担当係長も「5年前より太陽光との連携機能は用意していたが、売電主体の時代では早すぎた感が否めなかった。現在、工務店さんへの営業に注力しているところだが、着工棟数の減少から付加価値への意識が高まっている。連携機能も時代に合わせて更にレベルアップし、ようやく差別化要素となってきた」と語る。独自の太陽光連携モードを搭載する東芝キヤリアは「現状はユーザー様の手動。19年までにはHEMSによる自動制御へと昇華させたい」(国内商品企画部熱源企画担当 村上則行参事)とする。

予報外れのリスクないハイブリッド

 一方、ハイブリッドは通常、給湯需要の直前となる夕方頃にヒートポンプ運転を開始するところ、太陽光連携モードでは昼間に前倒しする。リンナイ営業本部営業部ハイブリッド給湯室柴田毅課長は「前倒しのため予測が不要。天気・発電量を確認した上でモードを切り替えることができ、予測が外れるというリスクがない。また急な曇天・降雨があっても、基本的に従量電灯プランを採用しているため、買電発生による損失は殆どない」と強みを語る。さらに「ハイブリッドはガス給湯のバックアップがある分、貯湯タンク容量は100~160Lとエコキュートと比べ小ぶりである。『蓄熱できる量は少ないのでは?』と思われるかもしれないが、同機は需要直前に沸き上げる特性上、タンク内の水温が低く、さらに9月には新製品を投入し、新たに『ユコアHYBRID』とブランド名を付け積極的な展開に乗り出す。

熱源転換の攻防リプレイス合戦必至

 市場背景的にも勢いは増している。前頁上表の通り、エコキュート、エコジョーズの取替需要の波が19年に大量に押し寄せてくるためだ。通常のガス給湯機、電気温水器のリプレイスもあり、各メーカーの鼻息は荒い。パナソニックは「ガス給湯機の市場規模は大きい。電気自動車など世の中のエネルギーは電気にシフトしており、この流れに乗って熱源転換を図りたい。当社ではウィークポイントである〝予測の外れ〟に対して、蓄電池でカバーする機能を今年度中にも追加する」(種子田部長)と盤石な体制で自家消費時代に臨む。三菱電機営業部営業課専任の橘大介氏は「新製品では夜間からのシフト量を高モード、低モードの2パターンから選べるものとした。シフト湯量はユーザーの使用量によるが、高モードでは十分、東京電力の『スマートライフプラン』の深夜電力適用時間内で運転できる」と話す。同プランは1~6時までの5時間と他社のオール電化プランに比べ短い。外気温が低い冬場やユーザーの使用量によっては適用時間内を超えるケースがあり、提案しにくい要素であった。一方で、リンナイの柴田課長は「オール電化への切り替えとなるとキッチンなど一式取替となる。ガス併用住宅の方にはハイブリッド(ガスのまま)でも、余剰電力を活用できることを周知し、同機の一層普及、また熱源転換を抑えたい」と意気込みを語る。同機は特に岩谷産業や伊丹産業、鈴与商事などLPガス販売事業者の取り扱いが多く、熱源転換防止の最後の砦として展開している。東海地域のあるLP事業者は「ハイブリッドは高性能故に、ガス消費量が大幅に削減される。ガス供給者としては好ましい状況とは言えないが、熱源転換されるよりはよっぽど良い。ユーザー目線に立っても光熱費削減に繋がるため積極的に提案している」と話していた。19年到来は間近。一層加熱する両機の熱いバトルに目が話せない。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.42に掲載したものより抜粋しています。

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